第23章 不都合
「博士?誰か来てるの?」
突然、地下へ続く階段の方から聞いたことがあるような声がして、視線を向けた。
「ああ、哀くん。この間ミステリートレインで会った如月さんじゃよ」
姿を見せたのはあの灰原哀という子で。
そういえば博士と一緒に暮らしていると言っていたっけ。
喋ると尚更感じる。コナンくん以上に落ち着きと大人っぽさがある、どう見ても小学生には見えない子だ。
「こんにちは、お邪魔してます」
小さく会釈をすると、彼女は少し不思議そうな顔でこちらを見つめて、コナンくんの方へと駆け寄って行った。
「そうじゃ、ワシの発明品でも見るかの?」
「い、良いんですか・・・?」
博士のその言葉に全てを持っていかれて。
案内されたのは、博士の発明部屋と呼ばれるところだった。
至る所に色んな気になるものが置いてある。なんだろう、久々にわくわくするこの感覚。
「博士、これはなんですか?」
「これはのォーー・・・」
片っ端から気になるものを博士に質問しては、頭に叩き込んだ。傍から見れば使い所が分からないものもあるが、発明とはそう言うものだ。
何に使うか、使う時はくるのか、それだけのものではない。
博士にはそういった自由性の高い発明品が多くて、暫くの間会話が弾んだ。
「いやあ、こんな熱心に話を聞いてくれるとは・・・嬉しい限りじゃ」
「こちらこそ、色々お話が聞けて嬉しいです」
こんなに楽しいと感じたのは久しぶりで。ここに来て良かった。それは心底思うことだった。
その後もキョロキョロと発明品を見ていると、どこかで見たことがある気がする物が置いてあって。
「あの、これはなんですか?」
これは、チョーカー・・・?にしてはボタンがたくさんついている。
「これはチョーカー型変声機じゃ。こうやって首につけてボタンを押すと・・・」
説明しながら博士はそのチョーカーを首につけて、ボタンを押した。
「喉の振動を利用して、声が変わるんじゃ!」
「!」
それは博士の声とは全く違う別の声で。こんなクリアに声が変えられるなんて、単純にすごい。
「ストーカーの電話対策などに使えるんじゃよ」
なるほど、これはかなり実用性がある。それを見つめれば見つめるほど解体したい衝動に駆られた。