第23章 不都合
「大丈夫にするのが僕の役目でもあるから」
「・・・心強いね」
本当にこの子、何者なんだろう。
工藤新一の親戚に当たるらしいから、推理力や思考力は工藤家から継いだものだろうか。
そこから何となく、彼のこともどんどんと気になっていって。
そんな話をしながら、なるべく車の通れない道を選んで阿笠低へと向かった。コナンくんは頻りに後方を確認していたようだが、誰かの気配というものは感じられなかった。
暫く進んで、ようやく違和感を感じて。
「・・・コナンくん、一旦お家に帰ってる?」
その道は、現在居候している工藤邸に向かう道と同じで。不安になって彼に声をかけた。
「ああ、言ってなかったっけ?阿笠博士の家は有希子おば・・・お姉さんの家の隣りだよ」
なるほど、あの大きなお宅か・・・。
というより、そんな近くに阿笠博士がいたなんて。もっと早く知っていれば、暇な時にお邪魔したかったな、と悔やんでみて。
「今日は博士も暇だろうし、色々話ができると思うよ」
「ほんと・・・?」
少し暗くなってしまっていた気分が晴れたようで。暫く機械やパーツには触れていないが、その欲が落ちたわけではない。
コナンくんが持っている探偵バッジや、その他に発明したものも見てみたい。
思いの外、舞い上がっている自分がいた。
ーーー
「おー、コナンくん。それに如月さんも。待っておったよ」
「こんにちは。すみません、お手間とらせてしまったみたいで」
阿笠低に着くなり、博士が出迎えてくれて。外見も大きな家だが、中もかなり広い。下へ続く階段があるということは、地下もあるのか。
「いやいや、これくらい朝飯前じゃよ」
そう笑いながら、透さんのスマホを私に差し出した。
それを少し恐る恐る受け取って。
「・・・ありがとうございます」
改めて感謝の言葉を口にした。
これは透さんから預かった大切なものだ。
大事にしなきゃと思うと同時に、少しでも透さんのことを疑ってしまった自分が嫌になって。
「何か妙な連絡があったら必ず教えてね」
「分かってる」
用心深いな、なんて心の中で笑いながらスマホの電源ボタンを押して。
メールや着信履歴がないことに、すこしがっかりしている自分がいた。