第23章 不都合
「では、そのご予定が終わってからはいかがですか?時間等はひなたさんに合わせますので」
それはもっと都合が悪い気がするが、どう答えて良いのか迷ってしまい、顔は動かさずに小さくコナンくんに視線を向けた。
車の傍で待つ彼は私の視線に気付いたのか、少し焦ったような表情を見せながら、小さく首を横に降った。
「・・・今日は・・・すみません。また都合が良い日を連絡しますので」
そう言って半ば無理矢理、掴まれていた手を振りほどくように車から降りた。
「ありがとうございました」
車を降りるとすぐにドアを閉めた。透さんの方を向いて頭を下げながらお礼を言って、コナンくんの手を掴むなり路地裏へと駆け込んだ。
彼の顔を見るのが少し怖かった。
何故だか胸が苦しくて。
それを紛らわせるように走った。
「如月さん・・・っ!」
「・・・!!」
少しの間、無我夢中で走って。
コナンくんからの呼びかけで、やっと我に返った。
「ご、ごめんなさい・・・!」
「いや、僕は大丈夫だけど・・・」
少し上がってしまった息をお互い整えた。コナンくんに色々申し訳なくなってしまい、その場で彼の目の前にしゃがみ込んで。
「・・・ごめん」
「そんなに謝らないで。如月さんの不安な気持ちも分かるから」
その言葉に思わず顔を上げてコナンくんの顔を見た。
私・・・多分すごく情けない顔してる。
「今の状況が落ち着いたら如月さんの知りたいこともちゃんと調べるし、今起きてることもちゃんと話すから」
私を安心させるように、コナンくんは力強くそう言ってくれた。彼だって危険な事をしているはずのに。私はどうしてそれを止めないんだろう。
それは口では言い表せられない感覚で。
「・・・ありがとう。でも、兄のことは透さんに頼んであるし、彼の口から聞きたいから大丈夫」
きっと情けない笑顔だろうけれど。それでも無理矢理コナンくんに笑ってみせた。
私の言葉を聞いたコナンくんもどこか情けない笑顔を見せて。
「分かった」
彼のこういうところに信頼を感じているのかもしれない。
何か不思議なものを彼は持っている気がした。