第23章 不都合
「すみません。後ろ、狭くないですか?」
「いえ、大丈夫です」
私とコナンくんは必然的に後部座席に乗り込んで。確かに少し狭いが、二人なら問題はなさそうだ。
「ではまず、毛利先生のお宅から」
まず、というその言葉から、やはり私は残されることになっていたんだと思って。
「・・・大丈夫なの?コナンくん」
「如月さんは気にせずこれ以上首を突っ込まないで」
透さんに聞こえないよう、コナンくんの耳元で静かに話すが、真剣な表情のまま彼にはそう突き放された。
そんな風に言われてしまえば、私はこれ以上口を出せなくて。
「とりあえず、探偵事務所に着いたら何がなんでもこの車からは降りて。僕が一緒に送っていくから。安室さんのスマホも返しておきたいし」
「あ・・・。スマホ・・・どうだった?」
そういえば透さんのスマホを調べてもらっていたんだ。つい昨日のことなのに、色々なことですっ飛んでしまっていた。
「何も無かったよ。でも、安心はしないでね」
コナンくんはそう言ったけれど、少なからず何も無かったことには安心してしまって。
単純にあれは私との連絡を断ちたくなくて貸したものということか。
「分かった、ありがとう」
コナンくんが味方で良かったと思ってしまうのは何故だろう。まだほんの小学生なのに。
こんな小さな存在に頼り切っている自分が心底情けなく思えた。
そこから探偵事務所に着くまでは終始お互い無言で。コナンくんも何か考え事を始めたようで、話しかけられる雰囲気でもなかった。
「着きましたよ」
透さんが後部座席に体を向けるように告げた。慌ててコナンくんに続いて車を降りようとしたところ、二の腕辺りを突然掴まれてしまって。
「ひなたさんには手伝って頂きたいことがあるんですが、この後ご予定がありますか?」
いつもの笑顔。嫌な予感しかしないが、透さんの口から出た情報が欲しいことも確かで。
でもこの車からは何がなんでも降りろ、というコナンくんの指示もある。
「すみません・・・この後は予定が入っていまして・・・」
透さんと話をしたいのは山々だが、ここはコナンくんに従って丁重に断りの言葉を告げた。