第22章 再捜査
「毛利先生ならどうです?突然名前を出されて、知ってるか?って聞かれたら」
「そりゃまあ、今のオバサン達みたいに・・・」
毛利探偵がそこまで言ってようやく気付いた。
透さんが何を言いたいのか。
「そう、大抵の人は自分の記憶に絶対的な自信はないんです。だから普通はNOと言う前に、その尋ね人の名前以外の情報を知りたがる」
得意気にそう話す透さんはいかにも探偵、といった感じで。私の方まで追い込まれている気分に陥った。
「だから君はすごいよ。名前だけで知らない人だと確信できるんだから」
改めてコナンくんに向き直った透さんがトドメを指すようにそう言って。コナンくんも驚いた様子で透さんを見つめていた。
「ガキの言うことを真に受けるなよ。会ったことがあっても名前を知らない奴はザラにいるし・・・あだ名とかでしか知らねえ奴もいるからよ」
そう毛利探偵がフォローを入れるが、今度私に質問が飛んできた時、かわせる自信がない。
不安からコナンくんに目を向けるが、コナンくんは透さんを見つめていてその視線を外さなかった。
「3、2、1・・・ゼロー!!」
「!」
突然、エレベーターの動きに合わせて叫んだ子どもの声に、透さんが反応を示し視線を向けた。
その反応が少し過敏に反応したように見えて、違和感を感じた。それはコナンくんも感じていたようで。
「どうかしたか?」
「あ、いえ・・・」
黙ってしまった透さんを不思議に思ったのか、毛利探偵が透さんに話かけると、彼は我に返ったように話して。
「僕のあだ名もゼロだったので、呼ばれたのかと」
「なんでゼロ?確か名前は透だったよな?」
「透けてるってことは何も無いってこと・・・だからゼロ。子どもがつけるあだ名の法則なんて、そんなモンですよ」
あだ名については嘘なのか本当なのかは分からないが、その理由はそれらしく見えて。
でも、恐らくゼロという単語に反応したのは確かだ。
コナンくんの顔はどこか険しさを増していて、とても話しかけて良い雰囲気とは言えなかったが、この状況をやり過ごす為には彼の言葉が必要だと思った。
こんな小さな探偵さんを頼り切っている自分に呆れながらも、隣にそれとなくしゃがみ込んで。