第22章 再捜査
「いえ、とんでもないです。私もたまたま来ただけなんですが、妃さん元気そうで良かったです」
そう、ここへは楠田陸道のことを調べに来たのだから。なるべく相談はしたくなかったが、コナンくんがいるなら都合が良い。
彼も楠田陸道については何か知っているのだろうし、名前を出せば何か教えてくれるかもしれない。
そう思って毛利探偵に一言告げ、少し離れた場所へコナンくんを誘導した。
「・・・で、ここに来たってことは何か調べに来たの?」
私がコナンくんの傍にしゃがみ込むなり、彼の方からそう聞かれて。
思わずそれに驚いてしまったが、周りをキョロキョロと確認してから、その名前を口にした。
「・・・楠田陸道」
小さな声でそれを告げると、一瞬コナンくんの目付きが変わって。
「どこで知ったの」
「さっき・・・透さんの事務所で。彼の写真と、その裏に名前が書いてあったから」
そう言うと少し険しい顔になったコナンくんが、何か考え込む素振りを見せて。
やっぱりまずかっただろうか。
「でも、どうしてここに?」
「ここの資料と一緒に顔写真がしまってあったから、何か関係があるのかと思って」
そう言うと尚更コナンくんは血相を変えて。
そんなに彼は・・・楠田陸道は危険な人物なのだろうか。
「・・・これ以上はダメだよ」
少しの間の後、コナンくんが低い声でそう告げて。心臓がドクン、と音を立てた。
「ごめん・・・、それは聞けないかも」
私だって引く訳にはいかない。これ以上、蚊帳の外はごめんだ。それに、私が動かなければいつまで経っても兄のことは分からず、透さんのこともどうにも出来なくなりそうで。
「危険なんだ・・・!」
「大丈夫、知ってるよ」
鬼気迫る顔でコナンくんが私に強く言うが、何を言われても私は手を引くつもりはない。
それに、楠田陸道がどれだけ重要な人物か、彼の態度や表情でよく分かった。
これ以上は自分で調べる他なさそうだが。
そう思いながら立ち上がり、彼に別れの挨拶を告げようとした瞬間。
「あれ、毛利先生じゃありませんか」
「・・・!!」
今、できれば一番会いたくない人物の声が少し後ろの方から聞こえて。コナンくんとほぼ同時に振り向くと、透さんがこちらに向かって歩いていた。