第22章 再捜査
携帯の電源を切っていたから毛利探偵に連絡が付かず、ついさっき蘭さんが家に置いてきた手紙を確認した毛利探偵が病院まで飛んできた・・・というところらしい。
この様子だけ見ると、とても二人が離婚しているようには見えなくて。
「ねえ、コナンくん」
「どうしたの?」
コナンくんの傍にしゃがみ込み、耳打ちする形で手を口に添えて話しかけた。
「毛利探偵と妃さんって・・・その・・・」
「ああ・・・あの二人、別居してるんだ」
最後は濁したが、コナンくんは汲み取ってくれて。やっぱり小学一年生とは思えないが、実際そうなのだから不思議だ。
そして、別居という言葉を聞いて妙に納得してしまった。離婚している訳ではないんだ。
「でも苗字はどうして・・・?」
「別居中だから妃先生の苗字は旧姓を使ってるんだって」
「先生?」
確かに学校の先生のように見えなくもないが。
「妃先生は弁護士さんだよ」
なるほど・・・弁護士。確かに妃弁護士事務所と言われれば聞き覚えがある。
名探偵と弁護士の娘という珍しい血筋に、思わず口が開いてしまうようだった。
コナンくんとそんな会話を続けている最中、毛利探偵と妃さんの口喧嘩は続いていて。お互いの折り合いの悪さが何となく垣間見えたが、どことなく羨ましくも思えた。
夫婦ってこんな感じで言いたいことを言えて、お互い心配したりもして。一緒に食卓を囲んだり笑いあったりもするんだろうな。
ぼんやりと、記憶にない自分の母や父の顔を想像してみて。
「出てけ!!」
そんな時、突然毛利探偵が妃さんの罵倒と共に部屋の外に放り出されて。
それに苦笑いしながらも、軽い挨拶を済ませてから私もコナンくんと一緒に部屋を後にした。
弁護士というだけあって、中々気の強い人のようだな、と廊下に出て改めて思う。
「いやあ・・・お見苦しいものを見せてしまってすみませんでした・・・」
ヘラっと笑いながら毛利探偵は私に謝って。
彼の妃さんへの愛は痛いほど伝わる。
同時にやっぱり羨ましくて。