第22章 再捜査
「どうして私が事務所に行くと」
「昨日、車内で鍵を見つめていらしたので。以前、事務所へ行く際に貸したピッキングツールは、使用した形跡がありましたから、事務所の鍵は取り替えられていたんですよね」
ピッキングツールの使用形跡まで調べられているのか。
探偵って本当に嫌な性格をしている。
「そこから推測するに、恐らく彼から事務所の鍵を受け取ったのではないかと。そうなれば貴女の行動はただ一つ、ですよね」
全てバレているのが逆に清々しい。
「行っても良いんですか・・・?」
「止めても行くんですよね」
こんなことまで読まれているんだ。
「・・・では、お願いします」
そこまで分かっているのなら、沖矢さんの言葉に甘えることにした。
「ええ、分かりました。ただ、今日は大学へ行く日なので迎えに行くことができそうにありませんが」
「構いません、大丈夫です」
そうか、忘れかけていたが彼は大学院生だった。この一週間は家から出た様子がなかったが、それは私がこの家から出ないように監視する為だったのだろうか。
ぼんやりそんな考え事をしながら、コーヒーを入れ終え、いつものように朝食を食べ始めた。
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「では、僕はこれで。くれぐれも遅くならないように」
「分かってます。ありがとうございました」
約束通り透さんの事務所近くまで送ってもらい、形だけのお礼を言って彼と別れた。
流石に透さんはいないと思うが、彼から物色はするなと言われている。
なので今回は、資料の整理という言い訳を持って事務所に向かった。
ドアノブを回してみるが、やはり鍵は閉まっていて。貰った鍵を取り出して鍵穴に差し込み、くるりと回す。
カチャリ、と音を立てて開いた鍵にどこか緊張してしまって。
ゆっくりとドアを開き、中を除くように確認する。人の気配はしないようだ。
「えっと、電気・・・」
手探りで電気のスイッチを探し、部屋に明かりを灯した。ついこの間忍び込んだのに、とても久しぶりに来るようで。
「・・・よし」
片っ端から今日は資料を整理しつつ、何か目新しい情報を持ち帰りたい。そう思いながら、まずはこの間開けた場所を再び開いた。
ある程度は常に整理されているから、今更することは殆どないのだけれど。
まとめられたファイルを手に取ってはパラパラと捲り、取っては捲りを繰り返した。