第21章 違和感
「・・・沖矢さん?」
「だから宮野志保について知っていたんですね」
心臓が大きく一度反応して。
彼は味方のはずなのに。なんだか尋問されているような気になって。
「そうです。沖矢さんがそのことを知ってしまったなら単刀直入に聞きますが、ミステリートレインで会った仲間だと言うあの男・・・赤井秀一ですか」
殆ど開き直っていて。
どうせ彼はまた・・・。
「他人の空似ではないでしょうか」
やっぱり。
いつもの余裕な笑顔ではぐらかされる。
「・・・これは返しますから、出て行ってください」
彼に感謝はしているが、どこか信用し切れなくて。デジカメを押し付け、彼に背を向けた。
どうしてこんなにも、悲しく、苦しいのだろう。
「では、おやすみなさい」
「・・・はい」
素直に返せなくて。
相変わらず子どもみたいだと自分を罵り、沖矢さん部屋を出て行ったことを感じ取ってからベッドに倒れ込んだ。
彼らの顔を確認してからで良かったと、そこだけ安心して。
そういえば沖矢さんに、あの男は赤井秀一かと聞いた時、他人の空似、と言われた。
他人の空似・・・何故かその言葉が妙に引っかかって。
考え込む程分からなくなってくる。それに、ベッドへ倒れ込んでいるせいか、睡魔がどんどんと私の体を蝕んできて。
やめよう。元々弱い頭なのに、こうも眠たくては考えたところで頭が回らない。
諦めた私はそのまま睡魔に身を任せ、眠りについた。
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「・・・おはようございます」
「おはようございます、ひなたさん」
キッチンに行くと、沖矢さんがいつものように朝食を準備していて。少し気まずさの残る挨拶を交わした後、コーヒーを入れる準備をする。
いつの間にかそれは私の担当になっていて。
顔は洗ったが、どうにも目覚めない体を無理矢理動かし、コーヒーカップを取り出す。
ここにいる間は、沖矢さんが殆ど料理をしてくれた。
どうして隣にいるのは透さんじゃないんだろう。
それはここにいる数日間、ずっと思っていることで。
今日は沖矢さんに許可を貰って、透さんの事務所に行ってみるか・・・と考えていると。
「彼の事務所に行くようでしたら、近くまで送りましょうか」
沖矢さんにそう声をかけられ、一瞬で目が覚めた。