第21章 違和感
「さあ、ひなたさんのストーカーじゃないでしょうか」
またそうやってはぐらかす。
この人のこういう所が苦手だ。
肝心な話はいつも取り合ってくれない。
「・・・もう沖矢さんには聞きません」
沖矢さんは鼻で笑ったように感じたが、それに対しても、ぷいっと子どものように拗ねては外へ視線を向けた。
外はすっかり夜も更けて辺りは真っ暗だ。
街灯や車、ビルなどの灯りの中を突っ切る様子をただただ見つめた。
そういえば・・・と、ふと思い出す透さんから貰った事務所の鍵。
仕舞ったポケットに手を突っ込み、それを取り出した。
暫く見つめ、その意味を考えて。別に意味なんて無いのかもしれないが、彼がわざわざこれを渡したことが何となく疑問で。
まるで事務所に入ってくれと言わんばかりに。
それに、私が持ち帰ったあの情報。
私が事務所に忍び込むと読んでいたとしたら、あんな所には置いていないはず。
ということは、あれは私に見せる為にわざと・・・?
だとしたら尚更分からない。自分の資料や諸星大、宮野志保の資料をあそこに置いていたことが。
・・・いや、私に見せたかった資料はそれ以外にあるのだろうか?
あの時は時間がなくてよく調べられなかったが、今度は堂々と入れる。事務所にまた調べに行くことをその時、心に決めて。
そう言えばあの宮野志保という女性、死んだように見せかけることが目的と言っていたけれど・・・本当に助かったのだろうか。
組織で科学者をしていたようだが、具体的に何をしていたんだろうか。
そもそも、組織の狙いとは何なのか。
そして・・・赤井秀一。
彼は組織に銀の弾丸と恐れられていたようだけど、どんな人だったんだろう。
コナンくんは彼のこと、知っているんだろうか。
コナンくんがこの事に首を突っ込みすぎていることも気になっているが、そこは深く突き詰め過ぎると自分自身がパンクしてしまいそうで。
今現在一つ言えるのは、自分の中にある情報が少な過ぎる。
ただ、例え有力な情報を手に入れても、残念ながら私一人では上手く組み立てる能力も、秘密にすることも、生きていける自信も無いに等しかった。