第21章 違和感
「どこに向かってるんですか」
この先は高速の乗り場だ。
どこまで連れて行く気なんだろうか。
「ちょっとしたドライブですよ」
そう言って高速に乗った途端、明らかにスピードを上げて。
「お、沖矢さん・・・!?」
速過ぎる、という訳ではないが、普段の大人しい運転の沖矢さんとは雰囲気が違い、思わずシートベルトを握り締めた。
「少しだけ、飛ばしますよ」
言うのが少し遅い、と心の中で突っ込んで。
たまたまサイドミラーに目を向けると、沖矢さんの車をつけてくるように一台の車が張り付いていて。
最初に思い浮かんだのは透さん。
でも、透さんの車ではなくて。違う車に乗っているだけとも考えられたが、何となく透さんではない気がした。
だとしたらあれは・・・。
「・・・組織の車・・・?」
不安からポツリと出てしまって。
そうだ、何も私を狙うのは透さん・・・バーボンだけじゃない。
ウォッカと呼ばれた、あのポルシェに乗っていた人間だって、私のことを知っているかもしれない。
思いたくはないが、バーボンが組織の人間に、私が組織のことを知っているとバラしていたら。
何も私の命を狙うのは、バーボンだけじゃない。
そう思うと急に怖くなって。
「大丈夫ですよ」
震え始めた私に沖矢さんがそう声をかけた。
冷や汗が流れ、嫌な寒気もする。
透さん以外の人間に殺されると思うのは何故か怖くて。
「組織の車ではありませんから」
そう言いながら、その車を振り払うように車を進めて。小さめのコンパクトな作りの沖矢さんの車は、ギリギリな車間をするすると抜けていった。
付けてきていた車はセダン車だった為か、ギリギリな車間は抜けられずにいて。
あっという間に引き離してしまった。
「もう大丈夫でしょう」
相手の車が見えなくなったところで高速を降り、自宅に向けて今度は下道を走り出した。
いつの間にか恐怖や震えは無くなっていて。力強くシートベルトを握っているだけだった。
「・・・誰、だったんですか」
表情一つ変えない沖矢さんに尋ねて。
組織の人間でもなく、透さんでもないとしたら一体あれは・・・。