第21章 違和感
「彼に抱かれて尋問でもされましたか」
「・・・っ!」
突然過ぎるその言葉に、こちらは言葉を失った。
デリカシーのない人だな、なんて思いながら思わず彼に目を向けて。その横顔は笑顔を浮かべていた。
「快楽に溺れて吐いてしまった、と」
「・・・沖矢さんの名前を言ってしまったのはその前です」
言い訳になっていないし、その方が問題があることは分かっていたけれど。何か言い返さないと気持ちが立たなくて。
「組織を知っているとバレてしまったので、そろそろ自宅に帰っても良いですか」
バーボンを知らないことについては隠し通せたんだろうし、もう透さんから隠れる理由はないと判断した。
彼や組織から更に命を狙われるのは承知の上で。
「ええ、貴女がまた彼らに監視されたいのでしたら」
・・・確かに、透さんから貰った、恐らく隠しカメラが仕掛けられているであろう時計はそのままだ。
それに、部屋に盗聴器があってもおかしくない。
仮にそれらを処分したとしても、そのことが不都合に繋がるかもしれない。最悪コナンくんにまで被害が散る可能性もある。
「・・・引越し先が見つかるまでお邪魔しても良いですか」
「勿論。僕はいつまで居て頂いても構いませんよ」
沖矢さんの言葉は聞き流した。
今の家は引き払い、引っ越した方が早いと考えて。なるべく事務所からもポアロからも遠くの場所。
すぐに透さんにはバレてしまうかもしれないけれど。
「それと・・・透さんからスマホを預かりました」
「スマホ、ですか」
スマホが壊れていると嘘をついた所、そのスマホを貸してくれたこと、それをコナンくんに渡して調べてもらっていることなどを沖矢さんにも話した。
そして、去り際に発信機が仕掛けられていたことも。
「なるほど。これから彼と会うことがあれば、僕に一度相談してください」
一通り話を聞き終えた沖矢さんからそう言われて。言われなくても、事前に会うと分かっていたら多分相談していただろうけれど。
「分かりました」
素直に返事だけしておいた。
その時ふと窓の外に目をやり、工藤邸とは真逆の道を行っていることにようやく気付いて。
「・・・あの、沖矢さん」
「なんでしょうか」
私の聞きたいことは恐らく分かっているのに。
みな迄言わす彼にムッとしてしまいながらも、質問を続けた。