第21章 違和感
「一応、その場で初期化はしたって言ってたから何も入っていないとは思うんだけど・・・」
そこまで言えば、コナンくんも何が言いたいのか分かっているようで。
「・・・ちょっと借りるね。博士に調べてもらうよ。明日には返すから」
「ありがとう、ごめんね」
透さんから借りたそれをコナンくんへと手渡して。何も入っていないことを祈りつつも、さっき付けられた発信機のこともあるし、その期待は淡いことを感じた。
事務所まではあっという間に着いてしまって。
毛利探偵は車を返してくる、とすぐにその場を去ってしまった。
蘭さんには適当に誤魔化しを入れて、今日は自宅に帰ると伝えた。コナンくんにはアイコンタクトと表面上の言葉だけで別れを告げて。
工藤邸に向けて帰る道とは反対側、少し狭い路地を抜けたところにあの車は止まっていた。
その横には見慣れた人物が立っている。
「良い気分転換になりましたか?」
「・・・ええ、まあ」
コナンくんの指示通りに進んだところ、そこには本当に沖矢さんが迎えに来ていた。
私が彼の言葉に返事をすると、助手席のドアを開いてくれて。小さく頭を下げながら、助手席に乗り込んだ。
「・・・で、彼と何を話したんですか」
車に乗り込むなり沖矢さんにそう聞かれて。
どうやら透さんがあの場に来ていたことは、コナンくんから聞いているようだ。
「先に謝ります。・・・沖矢さんの名前、苗字だけですがバレてしまいました」
「ほぉ。で、他に喋ってしまったことは?」
「・・・私が組織を知っている、と」
それを聞いた沖矢さんがこちらを一瞬見た気がしたが、彼の顔を見ることはできなくて。
「・・・すみません」
「まあ、僕の名前を知られることは大したことではありません。調べればすぐに分かる事ですから」
それもそうだ。透さんは一応探偵としても働いているのだから、その辺りは専門分野だろうし。
「バーボンについては?」
「その他は知らぬ存ぜぬで通しましたが、透さんがそれを信じてくれているかは分かりません」
実際、彼はあまり信じていなさそうだったし。
それは私の嘘をつく能力が低過ぎたことが原因です、と心の中で再び謝罪した。