第21章 違和感
着替えを済ませ別荘に戻ると、コナンくんだけが玄関で待っていて。
「コナンくん・・・?どうしたの?」
「あ、みんなは先に車で待っててもらってるんだ」
そう言いながら彼はしゃがむように手招きをした。何だろうかと思いながら目線を合わせるように、彼の指示に従った。
「ちょっとごめんね」
小さな声で私に囁き、袖口や襟周りを触られて。驚いて声を上げそうになったが、その行動の意味はすぐに分かった。
そうだ・・・何故それを疑わなかったんだろう。
やはり私はまだ、彼のことをどこか信じ切っている部分があるんだな、と複雑な気持ちになった。
「・・・あった」
その言葉は少し残念に思ったが、当たり前か、とも思って。
コナンくんの手に目をやると、そこには小さな発信機のような物があった。
「さっき安室さんが如月さんを追いかけるように出て行ったからまさか、と思って」
変わらず小さな声で話を続け、それを靴で軽く踏み潰して壊した。
やっぱり、鍵はこの為の口実だったのか。
「・・・ごめん、なさい」
私の注意力の無さは、彼らも危険に晒してしまうことになる。その自覚が欠けていることに、少なからず罪悪感を感じて。
「気にしないで。あと、今日は事務所まで帰ったら昴さんが近くまで迎えに来てくれることになってるから。蘭姉ちゃん達には適当に話を合わせてね」
「分かった・・・ありがとう」
コナンくんは壊した発信機をハンカチで包んでポケットにしまい、私の手を取った。
「行こう」
「・・・うん」
彼の笑顔につられて少し笑ってしまって。
本当に不思議な子だな、なんて思いながら蘭さん達が待つ駐車場へと向かった。
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園子さんを立派なお屋敷まで送り届け、事務所に向かっている最中、透さんから預かっているスマホの存在をやっと思い出して。
「・・・コナンくん」
後部座席に並んで座っていた為、こっそり口元に手を当てて話し掛けた。
「どうしたの?」
合わせて小声で返してくれるコナンくんに、ポケットからスマホを取り出して見せた。
「実はこれ・・・、色々あって透さんから預かったんだけど・・・」
「安室さんから・・・!?」
その経緯が知りたそうな顔ではあったが、これ以上は色んな意味で彼には話せなかった。