第20章 追討ち
「では、友人宅から自宅へ戻る前には必ず連絡くださいね。それと、毛利探偵事務所に着いてからも連絡ください」
「・・・分かりました」
最後にそう念押しされた。
やっと着替えられる。そう思った矢先、突然唇を重ねられて。
「・・・んぅ、ん・・・!」
透さんから視線を外してしまっていたから、それは不意打ち過ぎて。
唇の隙間から透さんの舌が入り込んでくる。
相変わらず思考回路を破壊して回るその舌は、私の口内をゆっくりと犯していった。
「ん、・・・ふっ、んぅ・・・ぁ」
苦しくて透さんのテニスウェアをギュッと握った。シワになってしまう、なんて考えはとっくに壊されていて。
溢れてきた唾液が、口端を伝う。
「・・・っん、んぅ・・・っ、は・・・!」
苦しさが頂点に達したところで唇を離された。
それは私への配慮なのか意地悪なのか、微妙なところで。
「・・・本当はこれを渡しに来ました」
息が荒いままの私の手を取り、何かを握らされた。
この感覚は・・・鍵?
「事務所の新しい鍵です。依頼を受けていないので入ることはないと思いますが、念の為」
その顔は色々と見透かしていそうで。
これは私を事務所へ誘き出そうとしているのだろうか。
何にせよ、事務所にはこれで堂々と入れるようになった。
「物色はやめてくださいね」
「し、しませんよ・・・」
やはり、事務所に忍び込んだことはバレているんだろうか。でも資料の持ち出しはしていない。
・・・情報の持ち出しはしたから、本来ならばクビだろうけど。
「では、また近いうちに」
そう言ってまた軽く唇を触れ合わせて。
笑顔を崩さないまま、透さんは更衣室を後にした。
「・・・なん、だったの」
本当に鍵を渡しに来ただけだったのか。
・・・それならさっき別荘内で渡せば良い。
鍵を見つめながら、まだ少し落ち着かない息を整えた。
透さんの行動が分からない。
どこまで知っていて何が知りたいのか。
考えれば考えるほど、何かが私を苦しくさせた。
とにかくコナンくんや沖矢さんに報告をして、早めに自分の本来の家に帰ることを最前に考えた。