第20章 追討ち
「ひなたさん、聞こえますか!」
これは・・・透さんの声。
それでも彼の姿は確認ができなくて。
「とおる・・・さ、ん・・・」
確認するように彼の名前を絞り出すが、それは思ったよりもか細くて。
ちゃんと動いているか分からなかったが、必死に手を声のする方へ伸ばした。
透さん・・・透さん・・・・・・
彼の名前を何度も頭の中で叫んで。
私・・・また意識を無くしてしまうのだろうか。
その時に一瞬、大きな恐怖を感じて。
次に目を覚ましたら、私は・・・彼は・・・・・・。
そう思う頃にはもう、私は透さんの胸の中で意識を手放していた。
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「・・・・・・ぅ・・・」
「・・・!ひなたさん、大丈夫ですか・・・?」
これは・・・蘭さんの声?
「・・・は、はい・・・」
どうやらあの後、本当に気を失ってしまったようで。今までこんなことなかったのに。
疲れているんだろうか。
ぼんやりする頭を奮い立たせながら体を起こそうとすると、途端に強い吐き気に襲われて。
「・・・っ!」
急いで口元を手で塞ぎ、呼吸を落ち着けた。
気分は悪いが、胃から戻ってくることは防げたようで。
「まだ顔色悪いですよ。横になってた方が・・・」
「いえ・・・大丈夫です・・・」
心配する蘭さんに、無理矢理笑顔を作って応えた。気分が悪い最中、辺りを見回すとそこはまだ桃園さんの別荘で。
どれくらいの間、眠っていたのだろう。
そう思ってキョロキョロしていると、キッチンにいたコナンくんが私に気付いて駆け寄ってきた。
「大丈夫!?如月さん」
そう言うコナンくんの顔色は良さそうで。
「うん、大丈夫。コナンくんも元気そうで良かった」
彼の元気そうな顔を見たら少し安心した。
でも、周りの空気は少し不穏なもので。
「・・・そういえば、あの後どうなったの?」
思い出したくはないが、石栗さんが亡くなったと聞いたのが、状況を把握する最後の言葉。
コナンくんに問いかけながら、彼がさっきまでいたキッチンに目を向けると、そこには毛利探偵と透さんが見えて。
透さんの姿が確認できたことに、何故か心の隅で安堵した。