第19章 求めて※
「ちょっと失礼します」
そう言って布団を剥ぎ取られ、再び色々さらけ出されて。
「あ・・・っ、ちょ・・・透さ・・・!」
「じっとしててください」
有無を言わせない言葉に、それ以上は何も言えなくて。真剣な透さんの目つきも、その思いを更に強くさせた。
私の手を取ったと思ったら、少し上に上げられて。持ってきたタオルを私の腕に沿わせた。
冷たい。
わざわざ濡らしてきてくれたんだとその時分かって。
「そのままだと気持ち悪いかと思いまして」
笑顔だけど目付きは真剣なままで。ゆっくりと、衣服を整えながら全身を拭いてくれた。
そのお陰で、さっきまでの気持ち悪さがかなり軽いものになった。
「・・・ありがとうございます」
「どういたしまして」
それが終えられた頃には、体も少しだけ言うことを聞くようになっていて。
力は入りにくいが、そろそろ下に戻らないと蘭さん達が探しに来てもおかしくない。
そう思い、体に鞭打ってベッドから降りようとした。
「あ、水を飲んでから動いた方が良いですよ」
そう言いながら、透さんは持ってきたペットボトルを私に渡した。
「ありがとうございます」
それを受け取り、何口か口に運んだ。
水分を求めていた体に少しずつ潤いを補給され、それぞれが本来の機能を果たすように、気持ちも体もハッキリとしてきて。
ここで彼と離れたら・・・次に会うことはできるのだろうか。
なんて、ふと不安になって。
「・・・透さん」
「?」
私の呼びかけに、透さんは視線だけで応えて。
戻る前に、一度だけ彼に確認しておきたかった。
「私・・・いつまで透さんの傍に、いても良いですか・・・?」
ポアロの先輩として。
探偵業の助手として。
そして・・・恋人ごっこの相手として。
「・・・ずっと、いてくれないんですか?」
切ない笑顔で、透さんに質問で返された。
その言葉は安室透のものだと信じて。
「います、いさせてください・・・っ」
涙ぐみそうになりながらも、そう答えた。
偽りの関係でも良いから。
できることなら、ずっと。
「こちらこそ」
その瞬間、お互いの唇が触れ合って。
触れるだけの優しいキス。
お互いの存在を確認し合うように、触れ合ったまま少しの時間を過ごした。