第19章 求めて※
「・・・時間も余裕もありませんし、ひなたさんのここも問題ないようなので」
そう言う透さんはどこからともなく避妊具を取り出した。
どこに隠し持っていたんだろう、どうして持ち歩いているんだろう、そう言えば前回はいつ付けていたんだろうか、と色々疑問は出てきたが、醜い私の中の欲望が、そんなことどうでも良いと打ち消して。
「さすがに暑いですね」
確かに、ただでさえクーラーのついていない部屋なのに、お互いの熱気がすごくて。
汗ばむ体に少し気持ち悪さを感じて。
徐ろに透さんはテニスウェアを脱いで、その褐色の肌をさらけ出した。
初めて見る彼の裸に心臓が強く脈を打った。
あの時は暗かった上、透さんは服を着たままだったから。
思っていたより筋肉がついていて、その体に触れてみたいと思った。でもまだ私の中には理性が働いていて。
「・・・透さん、鍛えているんですか・・・?」
素朴な疑問がポツリと漏れてしまって。
組織の人間だから、鍛えていてもおかしくはないんだけど。
「ええ、まあ。探偵は危険なことも多いですし」
探偵だけが理由でないことは分かっている。
それでも、探偵業で危ないことがあるのも事実だろう。
「あまり、危ないことはしないでくださいね・・・」
それは探偵としても、組織の人間としてもという意味で。
今の私にとって一番怖いのは、貴方がこの世から去ってしまうことだから。
もう・・・誰も失いたくない。
だから透さんには思いを告げないと決めていたのに。
いつの間にか忘れられなくなっていて。
兄と同じくらい、大切な人になっていて。
例え貴方の愛が偽りであっても。
私は貴方を大切な人だと思っている。
「・・・大丈夫ですよ」
優しい笑顔を向けられて、優しい声で返されて。
強く抱きしめられて。
それに応えるように強く抱きしめ返して。
彼からの愛を感じる度に、胸が締め付けられた。
「そろそろ、良いですか」
耳元で囁かれ、少しの間の後、小さく頷いた。
いつの間にかつけられていた避妊具に半ば驚きながらも、透さんのそれを蜜口に当てられれば、そんなこともすぐに忘れてしまった。
「今日はちゃんと力、抜いていてくださいね」
その言葉に身構えながら、大きく深呼吸をした。