第116章 安室2※
「・・・っは、はぁ・・・あ・・・」
達した直後は、どうにも背徳感が体を遅い、罪悪感が心を蝕む。
それを落ち着かせる為、暫く彼女に体を付けたまま、呼吸を繰り返した。
「・・・抜きますね」
だが、いつまでもそうしている訳にもいかない。
彼女に断りを入れ、ゆっくりナカから引き抜けば、まだ熱を帯びるそれが名残惜しそうにしていて。
同時に、密着し合っていた体も離すと、彼女の体はぐったりとベッドに横たわった。
・・・それはそうだ。
彼女には、かなり無茶をさせた自覚がある。
身体的にも精神的にも、かなり追い詰めてしまった。
アフターケアは必要だろうが・・・その相手は僕でない方が良いかもしれないということは、察していた。
そんな彼女を背に、部屋の隅で衣服を整えて。
一通りの身なりを整えると、彼女に近付き肌掛けを軽く体にかけた。
「・・・少しだけ、ここで待っていてください」
彼女の体を拭く為のタオルを準備する為。
・・・というのは、後からの理由で。
本当は、彼女の傍にあのままいてしまったら、再び襲ってしまいそうだったから。
それ程までに僕の理性というものは、酷く崩壊していた。
一度彼女から離れる為に部屋を出ると、あまり使われていない洗面を借り、水に一潜りさせたタオルを水が滴らない程度に絞って。
それを終えた瞬間、ふと見上げた目先に鏡があって。
そこに映った自分を見つめれば、酷い顔だということを思い知らされた。
・・・笑顔だ。笑顔を作っていろ。
そう何度も言い聞かせてみるが、できあがるのは酷く疲れきった様な表情のみで。
このままでは彼女に顔を合わせられない、と両手で頬を強めに叩き上げ、気合いを入れ直した。
それから、鏡には目を向けず、彼女を置いてきた部屋へともどってきて。
扉の前で大きく深呼吸をすると、数回のノックで入室を事前に知らせた。