第116章 安室2※
「こんなに濡らしておきながら、その言葉は信じられませんね」
・・・本当は、こんな触れ方したくない。
こんな言葉をかけて、追い込みたくない。
両手で必死に口を押さえ、声を押し殺そうとしている彼女に、胸がグッと締め付けられて。
それでも、何者か分からない自分を、必死にバーボンという自分で押さえ込んだ。
「こんな素敵なテニスウェア姿を、他の男に見られたと思うと妬けちゃいますね」
・・・本音と、女性を扱う為の言葉とが入り交じって。
彼女相手でなければ、いつもの何て事のない行為と言葉なのに。
「それでも、ひなたさんのこんな姿は・・・僕しか見れませんよね?」
自分はそうでないくせに、と心の中で自らを罵りながら、下着の隙間から指を忍ばせた。
「ん・・・ぁっ!」
・・・あの日より、反応は良くない。
それが何故なのかは明々白々だが、それでも彼女をその気にさせ、何かを引き出させなくてはいけない。
体はそれでも反応を示しているため、言葉と快楽でどうにかする他なかった。
「いつの間にこんなに濡らしていたんですか。やっぱりひなたさんはいやらしい人のようだ」
濡れていないわけではないが、このまますぐに指を動かしては彼女の体に負担がかかるかもしれない。
首を振る彼女を横目に、言葉で攻めあげた。
「透さ・・・!も、やめ・・・てっ!」
必死な、彼女の絞り出すような声。
それは今、この行為を止めてと言っているのかもしれないが・・・僕には、バーボンというものをやめろと言われているようにも思えた。
「貴女が本当のことを吐いてくれれば、すぐにやめますよ。それとも、やめてほしくありませんか?」
それでも今は、仮面をつけ続けなければならない。
・・・彼女を守ることもそうだが、僕には命に変えても守らなければならないものがあるから。
「ほんとに・・・っ、しりま、せん・・・っ!」
頑固な人だ。
そこは心の底から評価したい。
これは彼女の一種の強みだ。
「沖矢という男と、いつ初めて会ったんですか?」
「透さんが・・・ぁ、初めて会った・・・っ、あの時・・・ん!」
けれどそれがどれ程の強力なものであっても。
僕は破っていかなければならない。