第116章 安室2※
「と、るさ・・・やめ・・・あっ・・・!」
耳をなぞるように舐め上げれば、彼女の体は小刻みに震えてきて。
・・・彼女に触れることは、緊張感もあった。
けれどそれ以上に、背徳の上をいく感情が、どこか自分を静止するようで。
「質問に答えてください」
僕の肩を押し、どうにか体を離そうとするけれど。
そんな力が通用するはずもなく、ただ彼女は甘い声を漏らし続けた。
「ちが・・・っん・・・!」
首を横に振ろうとする彼女だったが、僕の手が添えてあるせいでそれは叶わなかった。
「列車が止まった後・・・、貴女はどちらへ?」
彼女のような人に、明確な快楽を与えるには早過ぎる。
耳でも十二分に感じる彼女へ、そこへの愛部を続けながら質問を続けた。
どこまで彼女が耐えるのか。
それは自分自身の興味もあり、答えは聞いておかなければならない事だったが、できれば答えないでほしいという天邪鬼な自分もいた。
「ゆ、友人の・・・ん、家に・・・っ」
段々と、彼女の息が荒くなって。
それでも沖矢昴の名前は出さなくて。
「・・・相変わらず頑固ですね」
耳から唇を離し、肩で大きく上下息をする彼女に、今度はすかさず唇を重ね合わせた。
「んっ・・・んう・・・!」
深く口付けながら、彼女の顔を両手で固定して。
その手に彼女の手を重ねられた瞬間、その温もりに罪悪感が増していくようだった。
「んぅ・・・、っんぁ・・・」
静かな少しだけ暑い部屋に、唾液の混ざり合う音が響く。
たどたどしい彼女の舌に絡める度、空気を求めるように彼女の体が動いた。
「・・・っは・・・ぁ、!」
唇を離した瞬間、大きく息を吸い込む彼女に心臓が高なった。
暑さで滲んだ汗が頬を伝い、判断も感情も鈍さを増していくようで。
「どうして僕のメールに返事をしなかったんですか」
彼女の目を真っ直ぐ見つめながら、何故か次に彼女へ言った言葉は、そんな事だった。