第116章 安室2※
廊下の一番奥の部屋。
誰も使っていないその部屋の前に、彼女自ら移動したのは運が良かった。
そう思いながら、念の為に部屋の鍵をかけて。
遮光カーテンが閉められているせいか、真昼なのに部屋は薄暗い。
「・・・・・・っ」
その部屋の中にあるベッドの上で、上体を僅かに起こしそこで後退る彼女に、ゆっくりと近付いて。
ベッドにいる彼女の逃げ場を更に無くすように。
四つん這いで上に跨り、圧力を掛けた。
「あまり時間もありませんし、手っ取り早く教えて頂けると幸いです」
「・・・っ・・・!」
・・・ああ、痛い。
胸の奥が、チクチクと痛む。
良心なんて、綺麗な気持ちではない。
自分の中の醜い感情が、どうしようもなくて傷んでいるのだと思った。
バーボンらしく彼女に振る舞うことが、これ程までに精神的にくるものとは。
・・・思いもしなかった。
彼女の頬に手を添わせ、ゆっくりとその小さな顔を包み込んだ。
その瞬間に震えた彼女の体は、怯えからなのか。
はたまた快楽からかのか・・・。
「今、どちらで寝泊まりを?」
「・・・友人、の・・・っひぁ・・・!」
耳元へと口を近づけ囁くように問えば、彼女の声はか細く聞こえてきて。
けれど、最初に口にした友人、という言葉に、僕の体は考えるよりも先に行動していた。
・・・何が何でも、沖矢昴とのことは隠し通すつもりか、と意地悪するように。
彼女の耳を舐めあげると、彼女から甘い声が漏れ出てきた。
「そのご友人の名前と住所を教えて頂けませんか」
「それは・・・ん・・・できま、せ・・・っあ・・・!」
耳朶などをキス混じりに攻め上げ、少しわざとらしく音を立てれば、彼女の声の甘さは少しずつ増していくようだった。
「あの男の家にいるからですか?」
その問いをした瞬間。
僕の腕を掴む彼女の手の力が強まって。
・・・それが彼女からの、Yesの返事だと受け取って問題はないようだ。