第116章 安室2※
「彼とはやはり、仲が良さそうですね」
「沖矢さんは関係ありません・・・」
足元に落としたままの視線は、彼女の自信の無さを現しているようだった。
・・・大方知っているとは、彼女も思っていないかもしれない。
「へえ。あの男、沖矢というのですか」
「・・・っ!」
それを裏付けるように、ちょっとした突きに彼女は酷く動揺していた。
しまった、と彼女は思っているかもしれないが・・・もうそれはこちらも分かっていることだ。
寧ろそれを掴んでいないと思っている、ということが分かり、こちらとしては別の収穫となった。
「あ、あの後・・・名前をお伺いして・・・」
「僕には、それ以前に知っていたように感じましたけど」
・・・バーボンらしく。
本当はここまで揺さぶりをしたい訳ではない。
けれど、やはり探りを入れない訳にはいかない。
今すぐ彼女に抱きしめたい感情を押し殺し、怯える彼女に視線を送り続けた。
「・・・っ!」
話す間にも進んでいた彼女の足は、壁に追いやった所で止まって。
あの時・・・ミステリートレインの時と同じように、彼女の逃げ場を失わせた。
「ひなたさんには聞きたいことが沢山あるんです。よろしければ、今からお話しませんか」
彼女を壁際に追いやったまま、迫るように更に近付いた。
ここでは話を中断させられる可能性がある。
この別荘内の間取りや、使われていない部屋。
その他部屋に大体何があるのかは、ここに来た時に粗方頭に入れている。
まずは人気のない場所に彼女を移動させる為、目を瞑る彼女を抱き抱えると、すぐ近くの使われていない部屋のベッドへと彼女を移動させた。