第116章 安室2※
14時を迎えようかという頃。
何度かコナンくんの眠る部屋に向かっていた彼女達だったが、今度はひなたさん1人が向かい始めて。
探りを入れるなら今か、とゆっくり彼女の後をつけると、気配を殺して様子を伺った。
「コナンくん?体調どう?」
ひなたさんがノックしながら声をかけるが、彼はぐっすり眠っているのか、返事はない。
その後も何度かノックをする彼女だったが、返事がない為かキッチンへ戻ろうとした所を、行く手を阻むように彼女の前へと立ち塞いだ。
「コナンくん、よく寝ているようですね」
「!!」
一本道であるこの廊下に、僕が立てば彼女の退路は塞がれる。
必然的に、彼女が話をせざるを得ない状況を作った。
一歩歩み寄れば、彼女は一歩下がり、一定の距離を保ったまま後退りを続けた。
「本当に心配していたんですよ。ミステリートレインでひなたさんを見かけてから、連絡も取れませんでしたし」
彼女の表情は強ばる一方だったが、それでもこれは本音だった。
沖矢昴が何者か分からない今、完全に信用しきってはいなかった。
あの時は致し方なく彼女といてもらう判断をしたが、そうしなければならなかった自分をどれだけ責めたことか。
「部屋にも戻っていないようですし、どちらで寝泊まりを?」
一応、彼女の家に置いてある時計から様子は伺っていた。
動きがあれば通知が来るようにはしていたが、その通知は未だ受け取れないままで。
「・・・友人の、家に・・・」
友人、か。
そう思えれば、こちらとしても気が楽なのだが。
「ホー、ミステリートレインで一緒に乗っていたあの男の家ですか?」
「ち、違います・・・!」
即座に返答をする方が怪しいのだと、彼女に教えてあげた方が良いのかもしれない。
それ程までに彼女の分かりやすい言動が、酷く僕を不安にさせる。