第116章 安室2※
「まあ意識もしっかりしているようですし、軽い脳震盪でしょう。ただ、手足が痺れたり、吐き気や目眩がしたら、病院で検査してもらうように」
「はい、ありがとうございました」
駆け付けた医師の横で、コナンくんはボーッと視線を揺らしていた。
落ち着いた様子で医師とやり取りする蘭さんの横で、ひなたさんは逆に落ち着きのない様子を見せていた。
優しい彼女らしいが、分かりやすい彼女の様子が時々こちらの不安も煽るようで。
「ここどこ・・・園子姉ちゃんの別荘じゃないよね・・・」
意識はまだはっきりしないようだが、それでも言語はハッキリとしている。
そこにはまず、安心をして。
「ここは、アンタにラケットぶつけた・・・」
「ウチの別荘よ。ごめんね坊や・・・汗で手が滑っちゃって・・・」
これまでの流れを周りの人間が話していくのを、コナンくんはぼんやりとした様子で聞いていた。
「じゃあ、少年も無事だったことだし。皆さん、俺らと団体戦やりません?一人余るけど、なんならミックスダブルスでも」
気になる話題もいくつかある中、空気を変えるように、別荘の持ち主と同じグループメンバーの一人が、話を切り出して。
「あ、わ・・・私は・・・!」
その話題に、ひなたさんは両手を振って遠慮する素振りを見せた。
まあ、彼らから見れば、テニスウェアを着ているのにまさか参加しないとは思わなかったのだろう。
「おや、ひなたさんはされないんですか?」
あまり警戒させては可哀想だと、彼女から距離は取っていたが。
テニスでもして気が紛れるのであれば、その方が良いだろう。
けど、僕の言葉一つ一つに彼女は怯えを見せた。
「は・・・はい・・・」
一瞬僕に向けられた視線も、すぐに背けられてしまって。
自業自得なのは重々承知なのだが、それでも胸が痛むのは・・・やはり彼女にまだ好かれていたいと思う自分が、いるからだろう。