第116章 安室2※
暫く彼女の目を見ていたけれど。
動揺する様子もなく、落ち着いてこちらを見ていた。
死を覚悟しているというより、どこか余裕そうな態度。
「では、手をあげて移動しましょうか。八号車の後ろにある貨物車に」
銃口を向けられ、言われた通りに手を上げてはいたが、依然として態度は変わらず。
僅かに違和感は残った。
「さあ、その扉を開けて中へ」
その違和感を残したまま、貨物車へと続く扉を彼女に開けさせた。
「ご心配なく。僕は君を生きたまま組織に連れ戻すつもりですから」
・・・というのは、ここだけの会話で。
ベルモットやジンは、彼女を始末したがっていたが、そう易々と僕の目の前で始末されては困る。
「この爆弾で連結部分を破壊してその貨物車だけを切り離し、止まり次第僕の仲間が君を回収するという段取りです」
そう彼女に説明しながら、連結部分へと小型の爆弾を設置した。
この辺りには僕の仲間・・・公安の人間を散らしてある。
止まり次第、保護されるはずだ。
全ては滞りなく、進んでいる。
「その間、君には少々気絶をしてもらいますがね。まあ、大丈夫。扉から離れた位置に寝てもらいますから爆発に巻き込まれる心配は・・・」
はずだったけれど。
「大丈夫じゃないみたいよ」
「え?」
僕の言葉を遮るように、シェリーは反論しつつ貨物車にあったシートを捲って。
「この貨物車の中、爆弾だらけ見たいだし」
「!?」
爆弾・・・そんな話は聞いていないが。
「・・・・・・」
・・・成程。
ベルモットは是が非でも彼女の命を絶とうという腹積もりか。
「どうやら、段取りに手違いがあったようね」
けれど、それならこちらにも手がある。
「仕方ない、僕と一緒に来てもらえますか」
貨物車の連結は外すが、そこに彼女を入れなければ良い話だ。
「悪いけど断るわ」
けれど、案外維持の強い彼女は、そのまま貨物車に入り扉を閉めてしまって。
「ふっ、噂通り困った娘だ。少々手荒く、いかせてもらいますよ」
致し方ない。
銃でこの扉を破ってでも、彼女をここから連れ出す。
そう、銃口をドアへと向けた瞬間。