第18章 嘘吐き※
「本当に・・・すみませんでした」
もう一度透さんに謝った。
これは心からの謝罪。
何度謝っても謝りきれなくて。
「・・・今、本当はどちらにいるんですか」
そう何度も聞くってことは、沖矢さんの家の場所や、そこにいることも知られていないんだと確信して。
「本当に、友人の家にいます。あの時からちょっと体調を崩して・・・一人で家にいるのも不安だったので、そのまま友人の家でお世話になってます」
よくこんな嘘がつけるな、なんて自分を嘲笑った。それでもこれは透さんを守る為の嘘だから。
・・・いや、自分を守る為・・・か。
「だったら僕に連絡をしてくれれば」
「透さんの迷惑になりたくなかったんです」
ここまでくれば罪悪感なんてない。嘘で固めるだけ。
透さんにバレたら・・・嫌われてしまうだろうか。
そもそも、透さんからの好意は嘘かもしれないけど。
「・・・もう少ししたら家には戻りますから。落ち着いたら・・・ポアロにも」
それは本当の言葉。いつまでも沖矢さんの家にいる訳にもいかないし。ポアロに戻れるかどうかは分からないけど。
それにこの話の流れだと恐らく、透さんはバーボン・・・組織の一員だということに、私は気付いていない、と思われているはず。
まだ、猶予はあるはずだ。
「・・・そうですか」
そう言って抱きしめられていた体を離されて。改めてお互いの顔を見つめ合った。
「もう一つ、聞いても良いでしょうか」
「なんですか・・・?」
そう聞いた瞬間、纏っていた空気が変わり、一気に寒気がした。部屋は暑いくらいなのに。
「・・・バーボン。このコードネーム、聞き覚えありませんか」
全身に震えが走った。
あの時と同じ言葉。
どうして・・・気付いてないはずじゃ・・・
私を見据える透さんの目が、獲物を狙うように鋭くて。
怖い。
ただそれだけしか感じられない。
「聞き覚えが、あるようですね」
「ぽ、ポルシェの中から聞こえた・・・お酒の名前、ですよね・・・。コードネーム・・・だったんですか」
今更惚けても遅いかもしれないけど。
「貴女も聞いたはずですよ、ミステリートレインで」
ああ、バレてるんだ・・・。
じゃあ、私の命はここまでだろうか。