第18章 嘘吐き※
「ゆ、友人の・・・ん、家に・・・っ」
段々と息も荒くなって。
苦しい。
息をするのも、透さんに嘘を・・・つくのも。
「・・・相変わらず頑固ですね」
そう言ってようやく耳から口を離された。
それでもまだ、肩を大きく上下させながら息をした。
「んっ・・・んう・・・!」
息も整わないうちに、今度は唇を重ねられて。深いキスの最中に顔を両手で固定され、動けないようにされた。
その手に自分の手を重ねて。
いつもの少しだけ冷たい手。
「んぅ・・・、っんぁ・・・」
静かな少しだけ暑い部屋に、唾液の混ざり合う音が響く。
透さんの舌が、口内も思考も全てかき回して。
「・・・っは・・・ぁ、!」
唇を離した瞬間、透さんの頬に暑さから来たであろう汗が伝うのが見えた。
少しそれに色気を感じてしまい、心臓が跳ねた。
「どうして僕のメールに返事をしなかったんですか」
私の目を真っ直ぐ見つめながらそう言われて。
今までと少し違う、余裕の無さそうな雰囲気。
そして、怒っているようにも見える真剣な目付き。
いつものようにその目から視線が外せなくなって。
「す、スマホの調子が悪く・・・なって・・・」
嘘をつく度に、胸にチクリと何かが刺さった。
その罪悪感で透さんの目から視線が逸れた。
「・・・心配かけて、すみませんでした・・・」
あの言葉は本当かどうか分からないけれど、今は透さんを信じたい。
そう思っての言葉だった。
「・・・っ」
それを告げた瞬間、透さんに強く強く抱き締められる。
一瞬、何がなんだか分からなくなり、目をキョロキョロと泳がせた。
「・・・本当に、心配したんですよ・・・・・・」
ドクン、と心臓が音を立てた。
その言葉はとても嘘には聞こえなくて。
切なく、絞り出すような声。
こんなに弱い透さんの声は、聞いたことがない。
「・・・透、さん・・・?」
抱き締められている彼の背中に、ゆっくりと確認するように手を回した。
「この一週間、僕がどんな気持ちで過ごしたか分かりますか」
それは私も同じだ。
透さんのことを考えなかった日なんて一度もない。
沖矢さんと過ごす毎日に、どれだけ罪悪感を感じたことか。