第116章 安室2※
今回もまた、お決まりと言っていいのか分からないが、毛利探偵が巻き込まれた殺人事件に手を貸しつつ、ベルモットに頼まれた仕事も淡々とこなした。
いや、正しくは・・・この小さな名探偵が巻き込まれた、だろうか。
「・・・・・・」
それより、彼女は無事に部屋へと戻っただろうか。
部屋にいれば多少は安全だと思うが。
『最寄り駅に停車したらすぐにこの場から離れてください。できるだけ遠くに。』
車内で事故があったというアナウンスが流れたのを確認すると、都合が良いと判断し、彼女にそうメールを送った。
ただ、さっきの彼女のあの様子からすると・・・。
『何かあったんですか?』
そう、返事をしてくるだろうなと予想はしていた。
返信の早さを考えれば、部屋に戻っているという判断はしても大丈夫だろう。
そこは一先ず、安心をして。
『気にしないでください。とにかく、先程の指示に従ってください。』
とにかく、少しでもベルモットの目が届かない場所へ移動させなければ。
終点までは何が何でも連れて行かない。
そう自分に言い聞かせ、小さな探偵と協力しながら殺人事件を解決した。
・・・僕の仕事は、ここからが本番で。
彼女のことも気にかけなければならないが、今はシェリーの保護だ。
予定通りベルモットに連絡をし、発煙装置を作動させると、乗客を8号車から遠ざけて。
今頃ベルモットは、自分の仕事をしている頃だろう。
この時だけは、シェリーに集中ができる。
そうこうしていると、彼女は咳き込みながら作戦通り、8号車へとやってきて。
その後ろ姿を見れば、少し懐かしい記憶が蘇った。
「さすがヘルエンジェルの娘さんだ。よく似てらっしゃる」
まるで、タイムスリップしたかのような気分に陥る中、銃口をシェリーへと向けながら、笑みを作って。
「初めまして。バーボン、これが僕のコードネームです」
作業のように、彼女へと今の自分の名前を名乗った。