第116章 安室2※
ーー14章~安室視点
そろそろ、置き土産に彼女が気付く頃だろうか。
一仕事を終え、愛車の中で軽い眠気に襲われながら、そんなことを考えて。
最近、時間ができれば彼女のことばかり考えている気がする。
それはあくまでも保護対象として彼女を見ているからなのか、それ以上の感情に気づいているからなのか。
いずれにせよ、彼女を守り抜くという使命は変わらない。
・・・やり方は、汚いが。
「・・・・・・」
少し考え事をすれば、僅かにあった眠気は本格的なものとなってきて。
最近、纏まった睡眠が取れていなかったな、と小さく欠伸を零した。
このまま運転しては危険だ。
少し仮眠をして次の仕事に向かおうと、座席を倒した時、胸ポケットに入れていたスマホがメールが届いたことを告げて。
安室透のスマホか、とメールを開けば、そこには先程までその存在で脳内をいっぱいにしていた、彼女からの文章があった。
『おはようございます。これから事務所を出てポアロに向かいます。それと・・・ワンピース、ありがとうございました。大事にします。』
・・・ああ、どうやら気付いてくれたようだ。
そのメールに、思わず頬を緩ませてしまって。
『おはようございます。体は大丈夫ですか?そのワンピース姿が見れることを楽しみにしてます。』
安室透としてだが、どこか浮かれた返事をしてしまった。
彼女に愛想を尽かされないようにするのは大前提ではあるのだが・・・あまりこちらが飲まれ過ぎてはいけないと思いつつ、情けなくも制御ができない。
何故そこまで彼女に惹かれるのか。
自分の中で確信めいた理由は見つかっていないが、理由など無くても良いかと開き直り始めてもいた。
・・・これで公安の人間なのだから、酷く滑稽だ。
そう自分を蔑みながら、彼女のメールをもう一度開き読み返していると、視界がゆっくりと歪んでいって。
勝てない睡魔に久しぶりに負けると、そのまま風見に起こされるまで、しっかりと眠ってしまった。