第115章 番外1※
「ひなたがあんなに肌を出して働いているとは思わなかった」
「・・・!」
そんな事、と言ってしまえばそれまでなのだけど。
心配性の彼にとってそれは、かなり重大な事実だったのだろう。
彼の表情の意味を理解すると、なるべくそれを視界に入れないように、背を向ける体勢へと戻して。
「濡れても大丈夫なように、と思って・・・」
この場合、そんなつもりは無くとも、何を言っても言い訳のように聞こえてしまう。
彼も理解はしているのだろうけど、納得をしたくないのだろうな。
「それに、ひなたも事件に巻き込まれやすい体質だということを失念していた」
湯船のお湯が揺らいだことに気付くと同時に、背中に重みを感じて。
背中に彼がのしかかるそれに珍しいと感じつつも、彼の言葉の方が気になった。
「も・・・?」
その1文字で、意味を増してくる。
私にも誰か別の人の事も含めて言っているようだけど。
彼にその人物を明かすつもりはないようで。
「なんでもない」
「ッ・・・」
それ以上問い詰められないようにする為か、彼の手がスルリと背後から私の体に添って滑らされると、あっという間にそれは胸の膨らみを包んでいった。
「零・・・っ」
パシャッと波立つ音が、浴室に響いて。
その手から逃れようと一応抵抗はしてみるけれど。
敵わないことは、体が一番よく分かっている。
「明日は休みだろ?」
「そう、だけど・・・っ」
休みになった、というのが正しいかもしれないが。
耳元で問われるそれも、体をゾクゾクと震わせてくる。
「ここじゃダメ・・・!」
声が響く、のぼせてしまう、明かりがついている。
私にとって悪条件しかない、と首を振れば、彼は小さくクスッと笑って。
「ここじゃなければ良いのか?」
意地悪な声色で、そう尋ねてきた。
「そ・・・っ」
そういう訳じゃない。
そう、言いかけたけれど。
「・・・・・・」
何も違わない。
ここじゃなければ良かった。
ここより声が響かなくて、のぼせなくて、明るくない場所で。
彼に触れて欲しいということに、間違いは無かった。