第115章 番外1※
「近い内に、僕とまた行こう」
彼の言葉に顔を上げると、私を安心させるような笑顔でこちらを見ていて。
「今度は、遊びに」
「・・・うん」
この時の約束は意外と早く叶うことになるとは、この時の私は思ってもいなくて。
そんな事を知るはずもない今は、どうにか浮かべた笑顔で情けなく返事をすると、彼の笑顔は更に満足さが足されたものになって。
きっと、今回の件で私が心配する事はないのだろう。
零が対処したことだから。
そんな事を思っていると、彼はベッドへ腰掛け、私の頬へと徐ろに手を伸ばして。
「ひなた」
「ん?」
優しい、安心する声色で私の名前を呼んだ。
頬の冷たい感覚に気持ち良さを感じ、静かに瞼を閉じながら返事をしてみたけれど。
「お風呂、一緒に入るか」
「・・・え?」
次に出た彼の言葉に、その瞼は即座に開かれる事になってしまった。
見開いた目を彼に向けると、子犬のような眼差しで私を見つめ、強請るように私の頬を撫でてきて。
「嫌か?」
・・・嫌なんて、言えるはずもない。
「そ、その聞き方はズルい・・・」
ダメということもできない。
元より、嫌だとは思っていないけれど。
「どうする?」
無論、恥ずかしさはある。
一緒に過ごしていても、お風呂に2人で入ることは多くなかったから。
こういう時、選択肢はあるようでない。
「じゅ・・・15分経ったら来て・・・」
一緒に入るか入らないかの選択肢ではなく、私も最初から彼と入りたいという気持ちはあるから。
そこに現れる羞恥心に勝てるかどうかの問題で。
「分かった」
クスクスと笑う彼を横目に、パタパタと1人早めに浴室へ向かうと、タイミングよく湯船にお湯が溜まった合図が聞こえて。
こういう事まで先読みされてしまうのか、と少し頬を膨らませつつため息を吐くと、早めに全身を洗い終えた。