第115章 番外1※
・・・腹部を手が這う感覚も、太ももに触れた手も。
全てされた事がない訳ではないのに。
どうしてこうも気持ち悪いのか。
何故こんなにも、嫌悪感しか出てこないのか。
やめて、と叫ぶこともできないまま、意識を何とか保つのが精一杯で。
「・・・っ」
堪えることしかできず、着ていたTシャツを脱がされそうになるのを肌で感じる中。
小屋内のざわつきが少し変わったような気がした。
視界は殆ど機能していないのに。
ピリついた空気だけは良く分かる。
その理由が、予期せぬ侵入者だったことは。
「そうですね」
その聞き覚えのある声で、感じ取った。
「貴方みたいな悪い人に、ね」
・・・零だ。
ここに彼が居る理由なんて考える余裕も無く、ただそこに彼がいるという事実に、今は安心感だけを覚えた。
「さっきの・・・」
ここに私を連れてきた男性は、私に向ける声とは違った雰囲気で零を見ているようだった。
「それ、この国では認められていない物ですよね?」
「だったら何だ」
会話は聞こえてくるのに。
脳での処理速度が遅い。
「・・・警察に、突き出さないといけませんね」
聞こえてくる単語だけが、脳に残っていく。
文章で入ってこないせいで、理解までは辿り着けなかった。
「それに」
零の声はいつも通りでも、いつもと少し違うようにも聞こえて。
「僕もまだ見たことないので、先に見るのはやめて頂けますか」
「はぁ?」
そういえば・・・零が警察と言った気がする。
「彼女の、水着姿」
そのせいなのか、ピリついた空気は更に刺す様な痛みを増していって。
「意味分かんねえ事言うんじゃねえよ」
それが最高潮に達した瞬間。
「・・・やれ」
一気に殺気立つ声が飛び交って。
耳を塞ぎたくなるような声と音が、次々に耳に届いてくる。
きっと私が辺りを見回せるようになった頃には、もう。
男達は静かになっているのだろうな。