第18章 嘘吐き※
近付いてくる彼と一定の距離を保つ為に、透さんが一歩進む度に一歩後ずさりした。
「本当に心配していたんですよ。ミステリートレインでひなたさんを見かけてから、連絡も取れませんでしたし」
冷や汗が流れる。
自然に・・・自然にってどうやるんだっけ。
透さんと、今までどう話してたっけ。
「部屋にも戻っていないようですし、どちらで寝泊まりを?」
その瞬間、思い出すのは置時計の存在。やっぱり、まだ監視されているんだろうか。
「・・・友人の、家に・・・」
ホテル、と言うのは少し無理があるかと思って。
「ホー、ミステリートレインで一緒に乗っていたあの男の家ですか?」
「ち、違います・・・!」
もしかして沖矢さんが、組織のことを探っているのに気付いているのだろうか。だから私と沖矢さんが会うことを嫌っているのか・・・。
「彼とはやはり、仲が良さそうですね」
「沖矢さんは関係ありません・・・」
しっかりと私を捉える視線に耐え難くなり、彼の足元に視線を落とした。
「へえ。あの男、沖矢というのですか」
「・・・っ!」
やってしまった。
名前までバレてしまうのはさすがにまずい。
そう思っても出てしまった言葉は戻せなくて。
「あ、あの後・・・名前をお伺いして・・・」
「僕には、それ以前に知っていたように感じましたけど」
やっぱり探偵なんて嫌い。
・・・透さんは好きだけど。
とにかく、この場から逃げなくてはいけない。でも逃げられない。
透さんと話がしたい。でも今はしたくない。
矛盾し過ぎる状況に、何も打開策が見当たらない。
「・・・っ!」
後ずさりを続けていた結果、部屋の奥まで行き着いてしまって。壁に背中がついてしまった。
あの時・・・ミステリートレインの時と同じように逃げ場がなくなってしまって。
「ひなたさんには聞きたいことが沢山あるんです。よろしければ、今からお話しませんか」
壁際に追いやられたまま、透さんが迫って来る。思わず目を瞑ると、体が浮いた感覚がして。
恐怖から目を開けられずにいると、今度はどこかに投げられて。そこがベッドだと気付くのに時間は要しなかった。