第115章 番外1※
そもそも彼は、何故子ども達と一緒なのだろう。
その子ども達は私に気付く事もなく、何やら慌ただしく動いているけれど。
少なくとも、潮干狩りに来ている様子ではない。
コナンくんがいるという事は、また事件か何か、か。
「すみませーん!誰かハンチング帽を被った背の高い男の人見ませんでしたかー!」
そうこうしている内に、今度は子ども達が大きな声で誰かを探し始めた。
さっきの声は・・・光彦くんか。
少し離れた場所で、元太くんや歩ちゃん達も声を大にして探し回っている。
もしかして、さっきのアナウンスも彼らがやったのだろうか。
彼らの呼び掛けに、潮干狩りをするお客さんは振り向き、辺りを見回して。
そんな様子を眺めている内に陽は暮れて、私の仕事も終わり、店の裏に立つテントの下で零を待っていた。
「・・・!」
こうやって夕日を眺める時間も最近は無かったな、と空をぼんやり眺めていると、またしても突然、視界に零が入り込んできて。
「・・・突然はびっくりするよ」
「事前に声を掛けてもひなたは驚くだろう?」
まあ、そうなのだけど。
もう少し気配を出して、というのは無理なお願いなのだろうな。
「終わったのか?」
「うん、零は?」
何があったのかは、今は敢えて聞かないけれど。
彼の用事はまだ終わらない事を、雰囲気で感じ取った。
「子供たちを送り届けたら迎えに来る。それまで待てるか?」
それでも最初の約束を守ろうとしてくれる彼を安心させるように、へらっと崩れた笑みを向けてみたけれど。
「今日は大丈夫だよ。何度も来るの大変でしょ?」
「僕がそうしたいんだ。悪いが、少し待っていてくれないか」
やはり彼は引かなくて。
零らしいな、と笑みを向けたまま小さく頷くと、彼も優しい笑みを私に返し、触れるだけのキスをして去っていった。