第115章 番外1※
「ごめん、如月さん・・・」
「何がですか?」
その日の午後、梓さんのお兄さんの杉人さんと2人休憩を取っていると、彼から突然謝罪を受けた。
「いや・・・仕事の都合で今日までしか出られなくなって・・・」
そう謝罪の内容を話す杉人さんに、思わず大きく瞬きをした。
寧ろ、この数日でも仕事の都合がついたことが凄いと思うのだけど。
「いえ、気にしないでください。もう仕事にも慣れましたし、明日からは梓さんも来ますから」
ポアロのことはマスターに相談済みで。
酷く落ち込む表情を見せる杉人さんに、こちらの方が申し訳なくなってしまった。
そうしている内に休憩時間も終わってしまい、週末ということもあってか、忙しくその日の仕事を終えた。
「お疲れ様、ひなたちゃん」
「お疲れ様です」
私は臨時ということもあり、夕方までの仕事を任されていたが。
裏でゴミを纏め帰ろうとしていた時、一緒に臨時で集められた男性から声を掛けられた。
「これ、店長から差し入れ」
「え、ありがとうございます」
そう言って差し出されたペットボトルに入ったジュースを受け取ると、早速開けて数口胃に運んだ。
カラカラになっていた体が水分を含んでいく感覚が、何とも言えず心地よくて。
「じゃあ、明日もよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
忙しくて、あまり他の従業員の人達と会話をすることはないけれど。
みんな優しく接してくれている。
それに喜びを覚えながら、今日もクタクタの体を引きずって帰路に着いた。
「・・・っ」
駅までの道、流石に疲れていたのか、急な眠気に襲われた。
起きていられない程のこんな眠気は、今までになくて。
このままでは立って帰ることが難しそうだ。
もしかすると、暑さに体がおかしくなっているのかもしれない。
・・・本当は使いたくないけれど。
倒れてしまっては意味がない、とその日はタクシーを拾って事務所近くまで帰宅した。