第114章 安室1※
「・・・っん・・・ぅ!」
立ったままの彼女の足からは、徐々に力が抜けていって。
段々とこちらに体重が掛かってくることに、今更遅い背徳感を覚えた。
「・・・っは、ぁ」
そんな感情を抱いていたせいか、唇を離し彼女が僕を見上げた瞬間、ほんの僅かに表情が変わったのを感じ取った。
それに気付いた瞬間、何かを悟られる前に彼女を急ぐように抱き抱えた。
「と・・・るさ・・・」
「・・・では、約束通りベッドを使わせて頂きますね」
・・・今、思っていた所じゃないか。
油断すれば、彼女にだって勘づかれてしまう。
考える隙を・・・与えてはいけない。
「あ・・・ちょ・・・っ!」
彼女を抱き抱えたまま、部屋の電気を消して。
半ば投げるように彼女をベッドに置いた。
多少戸惑ってくれる方が、彼女の余裕を無くせて良い。
そう思いながら、ベッドに横たわる彼女の上に覆い被さるように四つん這いになった。
「・・・そんなに可愛いことをされると、止まらなくなってしまいますよ」
暗闇に慣れないせいで、まだ顔はぼんやりとしか捉えられないが。
気配で彼女の頬に指を添わせると、さり気なく唇の位置を確認した。
「覚悟、してくださいね」
こういう時は、何も考えない方が良い。
彼女を気持ち良くさせることだけ。
それだけ考えていれば、良い。
そう言い聞かせるように脳内で何度も繰り返すと、本能に従うように、再びキスをした。
「ふ・・・んっ、あ」
・・・たどたどしいキスだ。
ここまで慣れを感じさせないのは酷く新鮮で。
そのせいか、つい、それを深くしてしまって。
合間の呼吸もままならない事を感じ取ると、彼女が必死に作り出そうとする唇の隙間を塞いでは、舌を絡めとった。