第18章 嘘吐き※
ラケットをぶつけた女性は桃園琴音さんといい、一緒に来ていた梅島真知さん、石栗三郎さん、そして高梨昇さんは、同じサークルの仲間達らしい。
「けど、残念だなあ」
怪我をしているコナンくんに注目が集まる中、少し太った容姿の石栗さんが突然口を開いて。
「俺の携帯電話の電池が切れてなかったら、その衝撃映像をムービーで撮ってネットにアップしてたのに。少年を襲う殺人サーブならぬ、殺人ラケットってな!」
「子どもが怪我したっていうのに、何言ってんだお前!」
耳を疑うような石栗さんの言葉に、高梨さんが言い返す。
「冗談だよ・・・俺はこの重い空気を和ませようと・・・」
「その冗談が元で、瓜生が死んだのかもしれないんだぞ・・・!」
高梨さんの怒りは増す一方で、石栗さんに詰め寄りながら更に言い返した。
話から察するに、どうやら彼らの共通の知人が亡くなっているようだ。
「怒るなよ。その瓜生の誕生日を祝う為に、こうやって久々にサークルのみんなで集まったんだろ?」
「そうね・・・喧嘩はやめましょう」
「瓜生くんも悲しむわ」
連れの女性陣の宥めもあって、一旦その場は収まった。中々、この石栗さんと言う人は嫌な意味で変わった人のようだ・・・と考えていると、再びその石栗さんが話を始めた。
「じゃあ、少年も無事だったことだし。皆さん、俺らと団体戦やりません?一人余るけど、なんならミックスダブルスでも」
「あ、わ・・・私は・・・!」
テニスウェアを着ているせいか、いつの間にか人数に数えられていることに気が付いて。慌てて両手を振りながら、参加しない意志を伝えようとした。
「おや、ひなたさんはされないんですか?」
少し離れた位置にいる透さんからそう問いかけられて。一々ビクビク反応してしまう自分が嫌になってくる。
「は・・・はい・・・」
一瞬向けてしまった透さんからすぐに視線を逸らした。
本当はすごく話したい。
でも色々なことがそれを許さない。
気持ちも体も矛盾だらけでおかしくなりそうだった。