第18章 嘘吐き※
迫ってくる透さんから逃げるように、背を向けた。それでも気配は確実に近付いていて。
「ボール危ないから下がっててね」
「いや・・・、危ないのはボールじゃなくて・・・!」
「危ない!!」
蘭さんとコナンくんが話している時に、突然透さんが叫んだ。何事かと思って思わず振り向くと、ラケットが勢いよく飛んでくるのが見えた。
「・・・いっ・・・!!」
それは真っ直ぐコナンくんに向かって飛んできて。彼の頭を直撃して、床に転がっていった。
「コナンくん・・・!?」
頭を抱え蹲るコナンくんの傍にしゃがみ込み、声をかけた。
こういう時・・・どうすれば・・・。
「触らないでください!」
透さんに強く言われ、コナンくんに伸ばしかけた手を寸前で止めた。
「下がっていてください。あと、この近くに救護室があったはずです。そこから誰か呼んできてください」
「私、行ってきます・・・!」
透さんの指示に蘭さんが走り出した。指示を出す間も、コナンくんの頭の傷を見たりしていて。
その後も的確に応急処置をする姿に唖然としてしまい、私はただただ突っ立っているだけしかできなかった。
そんな時に、飛んできたラケットの持ち主が現れて。何人かのグループで来ていたようだが、その内の一人の別荘が近くにあるとのことなので、そこへ一旦コナンくんを運ぶ事となった。
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「まあ意識もしっかりしているようですし、軽い脳震盪でしょう。ただ、手足が痺れたり、吐き気や目眩がしたら、病院で検査してもらうように」
「はい、ありがとうございました」
意識がハッキリしないのか、ボーッとしているコナンくんに医師がそう診断して。
それに対して落ち着いて返答する蘭さんは、やはり高校生には見えない。
私が動揺し過ぎで、役に立たないのもあるのだろうけど。
「ここどこ・・・園子姉ちゃんの別荘じゃないよね・・・」
「ここは、アンタにラケットぶつけた・・・」
「ウチの別荘よ。ごめんね坊や・・・汗で手が滑っちゃって・・・」
ぼんやりとそう話すコナンくんに、周りの人達が状況を説明していく。
その間も、私はただ立っていることしかできなかった。