第18章 嘘吐き※
テニスコートの駐車場に着いたところで、園子さんからテニスウェアを手渡された。
「これ、ひなたさんの分です!」
「えっ、いや・・・私は・・・」
そもそもするつもりでは無かったし、殆ど経験もない。そんな私がテニスウェアを着るなんて少しおこがましく感じて。
「一緒にやりましょう、ひなたさん!」
蘭さんからもそう押され、強く断れなくなってしまった。着替えてもしなければ良いんだ、そう思って渋々着替えだけを更衣室で済ませて。
「・・・大丈夫かなあ」
あまりにも短いスカートに、どこかそわそわする。周りを確認しながら恐る恐る更衣室から出て、蘭さん達に合流した。
「すごく似合ってます!」
「うんうん、どこかのモデルって感じ!」
「いや・・・お見苦しいもの見せてしまってすみません・・・」
恥ずかしさでいっぱいになりながら、何度も頭を下げた。彼女達くらい、若ければ良いんだけど。
その後、先にテニスコートへ向かったコナンくん達に合流する為、私達もそこへ足を進めた。
スペシャルコーチってどんな人だろう。毛利探偵も知っていて、鈴木財閥のご令嬢に教えるような人だから、プロなんだろうか・・・と考えながら向かっていると。
テニスコートに何故か怖い顔で立っているコナンくんがいて。その手にはラケットが握られている。
誰かと試合でもしているんだろうか。
そう思ってコナンくんの視線の先を追った。
「・・・ッ!」
一瞬、呼吸も心臓も止まった気がした。
それくらいの衝撃があって。
見間違うはずない。
そこにいるのは間違いなく、安室透だった。
どうして・・・ここに。
とにかく、ここから逃げなくてはいけない。
彼に見つかる前に、早く。
そう思って、彼女達に背を向け走り出そうとしたとき、私の傍にあったボール籠に音を立ててボールが入ってきた。
それにびっくりして、思わず足を止めてしまった。
それが飛んできたのは透さんの方から、というのは嫌でも分かって。
「おや、貴女も来ていたんですね」
声が、足音が、近付いてくる。
その度に鼓動が早くなる。
後ろを振り向くのが、怖い。
「如月ひなたさん」