第112章 恋愛で※
「・・・っ」
妙に、恥ずかしい。
ただ指に口付けられているだけなのに。
それは彼が衣服を身につけていないせいで艶っぽく見えてしまうからなのか、指先という普段他人の唇が触れない所だからなのか。
最初はそう思うだけだったのに。
「・・・っ、零・・・」
「ん?」
額や鎖骨には一度だけの口付けが。
指には何度も落とされる唇に、何だか変な気持ちになってしまって。
リップ音が響く度、ゾクッと何かが体を走る。
その妙な感情を抑え込むように、自身の唇を手の甲で蓋をするように隠すと、それを見た彼が突然口を開いて。
「!?」
僅かに瞼を伏せたかと思うと、突然私の指を彼の口内に含まれてしまった。
「ッ・・・、や・・・」
急なことに、体も脳も混乱してしまって。
戸惑い目を見開きながら手を引こうとしたが、それは彼の手が許さなかった。
含まれた指に、ゆっくりと温かい舌が這ってくる。
ねっとりとした動きと、普段感じることのない感覚に、脳はパンク寸前で。
「ひゃ、ぅ・・・」
・・・おかしくなる。
それは脳も体も、全てが。
ただ指を舐められているだけなのに。
それだけなのに、不思議なほど息が上がってくる。
「れい・・・っ」
欲情させられている。
それがピタリと当てはまる言葉だった。
我慢できなくなってくる感覚に体を捩らせ、触れて欲しいと言葉無く訴えて。
「・・・そんなズルい顔をされても困るな」
彼の唇に、私の指は触れたまま。
そのせいで、吐息と振動が指から伝わってくる。
それが酷く私を煽った。
「これ・・・やだ・・・っ」
厳密に言えば、嫌ではないけれど。
言葉と体と脳は、反発し合っていて。
思っていることと言いたいことが、リンクしない。
「では、どうされたい?」
そう問いながら、今度は手の平に口付けられて。
今晩のおかずの希望を聞くように尋ねられても、素直に答えられないことを彼はよく知っているくせに。