第112章 恋愛で※
「!!」
逃げた男は、地面へと叩きつけられていた。
それは、風見さんの手によって。
「あとは彼に任せておけば大丈夫ですので、2人はこちらへ」
「え・・・っ!?」
比較的落ち着いている私と違い、慌てる彼は風見さんと零へ交互に視線を動かした。
無理もない。
私も状況は飲み込めないが、少なくとも、彼らが警察官だということは知っているから。
大丈夫、という零の言葉を信じきることができる。
零に背中を押されながらその場を離れると、少し離れた屋根のある場所へと連れて行かれた。
「ひ、ヒロくん・・・大丈夫?」
小雨に変わっているとはいえ、零もそれなりに濡れていて。
髪をかき上げる姿に一瞬目を奪われたのを誤魔化すように、殴られた彼の傷に意識を持っていった。
「ん?あぁ、大丈夫大丈夫!それより、巻き込んでごめん」
笑顔で応えた上に、謝罪まで口にする。
・・・寧ろ巻き込んだのは、私のような気もするが。
「それで、安室さん。さっきの人は・・・」
「彼は、僕の探偵助手の、飛田です」
助手の、飛田。
・・・そうか。
風見さんも、公安の人だから。
正体を知られる訳にはいかないのか。
「た、探偵!?」
もう私は聞き慣れてしまったが、普通はそういう反応が正しいだろうな。
まあ、この街には探偵が溢れているが。
「こう見えて、毛利小五郎氏の弟子をしてました」
「そうだったんですか・・・!」
彼でも流石に毛利探偵の話は耳に入っているようで。
・・・もっとも、コナンくんが居なくなってからは、その推理が鈍っているという噂だが。
「ヒロくん・・・さっきの人は・・・」
「・・・アイツらも、昔はあんな感じでは、なかったんだけどな」
そういえば、と話を戻すと、彼は徐ろに視線を落としながら、呟くようにそう言って。
昔は、ということは、ここ最近の友人ではないのか。
そもそも、その友人には何に・・・。
「薬物使用に誘われていた、という所でしょうか?」
「!」
・・・という、私が次に聞きたかったことは、零の口から答えを聞いた。