第112章 恋愛で※
「・・・ヒロくん?」
反射的に彼へ視線を向けると、彼もまた、数秒前の私と同じように、眉間に深く皺を寄せていて。
このグループの男達と仲が良い訳ではないのだと察すると、再び男達へと視線を動かした。
「雨の中、彼女とデートか?」
「・・・この子は関係ない。それに、話は断ったはずだ」
ああ、いい話ではない。
それは誰が見ても、一目瞭然で。
「断って普通通りに過ごせると思ったか?」
「・・・・・・」
この場合・・・犯罪絡みのことなのだろうけど。
それが、どこまでの話なのか。
内容によっては見逃すことはできない、が。
「知ったら、やる。それしかないだろ」
聞けば、私も標的になるのだろうか。
私が追われることはある意味、都合が良いことではあるが。
その理由を、彼に知られる訳にもいかず。
「・・・言ったはずだ。俺はしないし、お前らもやめろって。良い事は一つも無い」
「は?説教かよ」
終始苛立つ様子だった男は、ついにその怒りを行動に移した。
隣に座っていた彼に近付いてきたかと思うと、私を庇うように立ったその彼の頬を、振り被った拳で殴りつけた。
「ヒロく・・・っ」
立ったばかりの体は、再びベンチに座る形に倒れ込んできて。
様子を伺うように即座にその顔を覗き込もうとしたが、彼は再び私を守るように腕を伸ばし、歯向かうようにゆっくり立ち上がった。
「・・・説教だよ。お前らにこれ以上やってほしくないからな」
そう男に言い返す彼の背中を見つめながら、それが眩し過ぎて目が眩みそうだった。
この人はどこまでも真っ直ぐで、曲げようのない人だ。
きっと、彼の事を好きになれなかったのは・・・。
「・・・舐めてんな」
私が彼に相応しくないとも、思っていたからなのだろうな。
「舐めていない。真面目に言ってる」
それは・・・零にも、言えることなのだろうけど。
でも何故、零は・・・私の中で、受け入れることができたのだろう。