第112章 恋愛で※

「あ、愛して･･･る･･･」

･･･小っ恥ずかしい。
こんな状況で、彼の目が見られるはずもなく。

自分の手で顔を覆うこともできない。

さっきとは違う息苦しさで、目が回りそうだった。

「もう一度」
「･･･！」

聞き取れなかった訳ではない。
それは彼の笑顔が証明している。

聞き取れた上での、もう一度だった。

「今日は飽きる程聞かせてもらう」

その言葉に、心臓を鷲掴みにされたような気になって。
それは具体的に何度だろう、なんていう心配は。

「まあ、飽きることは無いがな」

彼の言葉で、するだけ無駄なことを察した。

「･･･もう一度、聞かせてくれ」

もう一度と言っているけれど、この後何度言わせるつもりなのだろう。

･･･この際だから。

「･･･っ！」

本当に飽きるまで、言ってやろうと思う。
そう宣戦布告するように、近付いていた彼の顔に唇を近付けて。

少し外れてしまったキスをした。

「･･･零を、愛してる」

手を握られていなかったら、抱きついて押し倒しでもしたかった所だけど。

手だけの拘束で、身動きがとれないもどかしさに虚しさも込み上げた。

「愛してる･･･っ」

開き直ってしまえば、簡単だ。
今なら何度だって言えそうだ。

それは彼も私の目を見て察しているようだけど。

どうやらそれは、彼を焚き付けてしまったようで。

「っ、わ･･･ぁ･･･！？」

握られていた手を解かれたかと思うと、体はフワリと浮いて。

下ろされたのは勿論、ベッドの上だった。

「もう一度、お願いしようか」

下ろした私の上に被さるように跨っては、楽しそうな笑みでそう言って。

お互い少し喧嘩腰というのか、挑発的になっているのを肌で感じながら、何度でも言ってやると口を開きかけると。

「･･･っあ、ゃ･･･！！」

服の裾から彼の冷たい手が忍び込んできて。

わざと遮られたことは、彼の表情を見れば一目瞭然だった。