第112章 恋愛で※
「・・・早く」
楽しそうで何より、とでも言いたくなるような表情で急かしてくる彼を、軽く睨むように見て。
「あ・・・ふぁ・・・ッ」
言うつもりではあるのに。
言いかけてはいるのに。
何故か彼は、それを何度も阻むように指を私の肌に添わせてくる。
「ひなた」
それなのに、言葉では急かしてくる。
もどかしいのか怒っているのか、自分でも自分の感情が分からなくなる中、彼の指は下着の隙間から胸の膨らみへと到達していて。
「零・・・っ」
「もう限界か?」
勝負を受けたつもりも、しているつもりもないけれど。
負けたくないという感情が生まれているのは、何故だろう。
「愛し、て・・・っあ・・・ッ」
「どうした?」
白々しく言ってくる彼に文句の一つでも言いたい所ではあるけれど。
どうにも、体も感情もいうことを聞いてくれない。
「零・・・っ」
とりあえず、言わせたいなら手を止めてほしい、と懇願してみるけれど。
素直に聞いてくれるはずもなくて。
それどころか。
「恥ずかしがったり、必死に言う姿が可愛いんだ」
そんな事まで、言われてしまう始末で。
何かのスイッチを入れてしまったようだ、と僅かな後悔を覚えながらも、反撃することを心に決めて。
「!」
彼の隙を見切ると、くるっと体を反転させ、ベッドにうつ伏せになった。
これなら胸元を触られることはない。
目を見て言うことはできないが、言うことだけはできる。
これならどうだ、と言葉にはしないが態度に出すと、何故か彼からクスッという漏れた笑い声が聞こえてきて。
聞き間違いかと少し振り向きつつ様子を伺うと、今度は背中にひんやりとした違和感を感じた。
「・・・がら空きだな」
背中に重みを感じると同時に、耳元でそう囁かれて。
後ろから、というそれにゾクッとした感覚を覚えると、自分の作戦は裏目過ぎたことに、今更気付いてしまった。