第111章 きっと
そういうことも、気軽に言ってほしい。
だから今、私の中で熱く感じるこれはきっと、喜びからで。
「れ、零・・・っ」
上手く呼吸ができないのも、手が少し震えるのも。
言葉にできない感情も、思考が止まってしまったのも。
少し・・・泣きそうなのも。
嬉しくて、大好きで、堪らないからだ。
「!」
考えるより先に体が動いていた。
彼の服を掴み、引き寄せながら私も顔を近付けて。
顔が真っ赤になる感覚を覚えながら、唇を重ね合わせた。
「あ、愛してる!」
唇を離すと、喧嘩腰のように彼の胸ぐらを掴んで、叫ぶように勢いのまま言った。
「零が思ってるよりも、ずっと・・・っ!」
彼が本音を言ってくれたからなのかは、分からないけれど。
零れ落ちるように、私も本音が自然と出てくる。
「・・・っ」
ああ、泣きそうだ。
何故泣きそうなのか分からないけど。
悲しくなんかないのに。
鼻の奥がツンとする。
「足りないなら、いくらでもあげる・・・!」
今、どんな顔をしてしまっているだろう。
私から見える彼は、驚き唖然として、目を見開いたまま固まってしまっている。
・・・けど、それは次の瞬間に見えなくなってしまって。
「・・・はぁ」
俯き、手で顔を覆ったかと思うと、何故か彼はその場にしゃがみ込んでしまった。
「れ、零・・・?」
どうしたのかと焦りを露わにしながら、オロオロと忙しなく右往左往するが、返事どころかピクリと動くこともなく。
「・・・・・・」
段々とそれを見て冷静さを取り戻してくると、私も同じように目の前へ座り込んだ。
その時、ふと見えた彼の耳が真っ赤なのを確認すると、これが悪い反応ではないことを確信し、とりあえずの安心感を覚えた。
「・・・零」
そろそろ顔を見せてほしい、と名前を呼べば、案外簡単に従ってくれて。
ゆっくり、俯いていた顔を上げる彼を見つめながら、覗き込むように小首を傾げた。