第111章 きっと
「あ、煽ってはないけど・・・ここまで話したなら、最後まで本音が聞きたい・・・」
段々とはばかられる気もしてくるが。
今を逃すと、きっと次は無い。
蓋をされない内に、その中身を確認しておきたかった。
「・・・では言わせてもらうが」
帰路に着きかけた彼の体は一時留まると、私の方へと向き直って。
改まった様子で空気を吐き、表情を引き締めた瞬間。
僅かに後悔を覚える空気に、私も表情が強ばった。
何を言われるのか。
身構えて上目で彼を見ながら待っていると。
「ひなたからもっと言葉や行動が欲しいんだ」
「・・・?」
あまり思ってはいなかったことを、口にされた。
彼の言っていることが分からない訳ではないが、足りていないことに自覚が無くて。
そもそも、そんなものがあれば、こうして言われる事もないのだろうけど。
「会えない時は電話で、僕はひなたに愛していると伝えている」
「う、うん・・・」
それは、間違いない。
いつも彼は伝えてくれている。
だから私もそれに・・・。
「でも電話でひなたから、それが返ってきたことはない」
「そう・・・だっけ・・・」
応えていたつもりだった。
でもそれは私の思い込みだったようで。
やはり自覚がない、と間抜けな表情を彼に晒すと、半目で疎むような眼差しを私に向ける彼に、背筋を凍らせた。
「ご、ごめん・・・っ!」
蔑ろにしたつもりはない、ただ言ったつもりになっていた、と手を振って弁解するが、彼から返ってきたのは深いため息で。
呆れさせてしまった。
傷つけてしまった。
猛省しながら何度も謝ると、次に彼から返ってきたのは「違う」という言葉だった。
「やはりこんな子供のような我儘、口にしなければ良かったと後悔しただけだ」
私から視線を外し、再び深いため息を吐きながら頭を抱える彼を見て、一瞬固まってしまった。