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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第111章 きっと




「嘘・・・!」
「嘘ではないさ」

彼にとって、尋問中に嘘をついた相手を見ている時はこんな気持ちなのだろうな。

これ程まで分かりやすくはないだろうけど。

「でも何か言いたいことあるでしょ・・・」

さっきの言葉が嘘ではないとしても。
何かを隠していることは確かだ。

「何も無い。ひなたが何に悩んでいるのか知りたかっただけだ」
「はぐらかしちゃダメ・・・!」

帰るぞ、と握っていた私の手を引きながら家路に着こうとした彼の手を引き返して。

ここで彼の本音が聞けなければ、少なくとも今言いかけたことは聞けなくなるような気がして。

・・・ただでさえ、私たちに〝明日〟が訪れる保証はないのだから。

「・・・っ」

意地でも聞いて帰る、と踏ん張って彼を留めて。

彼の目を見て訴えるしかない。
そう判断し、後ろ姿しか確認できない彼の前へと移動し、その顔を覗き込んだ瞬間。

「ど・・・」

今朝と同じように、顔を真っ赤にさせる彼の表情に目を奪われた。

何故今日の彼はそうも、らしくないのか。
それ自体に問題は無いが、その理由は気になる。

今朝以上にその顔に釘付けになっていると、彼は呆れのような眼差しで私を横目で見て。

一瞬目が合ったかと思うと、その視界は彼の手によって塞がれてしまった。

「そうまじまじと見るな」

見るな、するな、と言われればしたくなるのが人間だ。
今は彼の手で見ることはできないが。

上がった熱は彼には珍しく、手から伝わってくるようで。

「頼む・・・久しぶりに会えて、ひなたを目の前にしているだけで浮かれているんだ」

気まずそうに、言いにくそうに。
けれどハッキリとした物言いで、彼は言葉を続けて。

「あまり煽ることはしないでくれ」

そう言い終わると、私の視界を塞いでいた手を取り払ってくれたけれど。

きっと私も彼の赤さが移っていて。

できればもう少し塞いでいてほしい、なんて。
我儘を思う始末だった。




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