第17章 侵入者
ーーーーー
遠くで誰かの話し声がする。
これは沖矢さんと・・・。
「・・・ん・・・」
意識を戻し、ゆっくりと目を開けた。
ぼんやり聞こえていた声の方へ目をやると、コナンくんがいて。
「あ、ごめん。起こしちゃった・・・?」
どうしてここにコナンくんがいるんだろう。それより、何故私は眠っていたのだろう。
「大丈夫?まだ顔色良くないみたいだけど」
伺うように顔を覗き込まれて。彼には最近、心配ばかりかけている気がする。何度も子どもに心配されるなんて・・・情けない。
「・・・ごめん、ちょっと待ってね・・・」
そう言ってゆっくりと体を起こして状況を把握した。
事務所に行って資料を撮影・・・その後、資料を読んで・・・そして・・・
「・・・そっか」
安室透という人を少し理解したつもりになって気分が悪くなったんだ。
こうなってもまだ、彼を忘れられないことを考えると、透さんの作戦は大成功と言えるだろう。
「・・・大丈夫?」
「うん、大丈夫・・・。心配ばかりかけてごめんね」
考えが落ち着いたところで、自分自身を嘲笑う気持ちで息を吐いた。
コナンくんの言葉にはなるべく笑顔で応えて。
「気が付いたようですね」
部屋の扉が開いて、沖矢さんが入ってくる。よく見るとここは、借りている部屋のベッドの上で。
「お水、ここに置いておきます」
そう言いながらベッド横のテーブルに水差しとコップの入ったトレーを置いた。
「・・・お手間かけさせてすみません」
この時ばかりは本当に頭が上がらない思いだった。恐らくここまで運んでくれたのも沖矢さんだろうし。
「如月さん、話できそう?」
「・・・透さんのこと?」
質問を質問で返した。それは話の内容によっては返答が変わる可能性があるからで。
「ううん、悪いけど違うよ」
逆に今はその方が助かる。
今、透さんについてまた悪い情報が入ったら、今度はどうなるか自分でも分からなかった。
それくらい私は、安室透という人を疑っているのに、惹かれ、離れられなくなっていた。