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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第111章 きっと




「疲れてる様子はあったけど・・・別に何も・・・」

実際、何も無かったと言えば何もない。
ただ少しだけ、彼に。

「何も無くて、この噛み跡はつかないだろ」

・・・そう。

「か、噛まれただけだよ」

それだけ。

「だけではない。傷害だぞ」

彼は私の首筋についているであろう噛み傷に、そっと指を這わせて。

何故か追い詰めるように、私に話した。

何だか頭が混乱してくる。
私よりも、彼の方が怒っているなんて。

「大したことないよ・・・」

確かに驚き、戸惑いはしたけれど。
彼を訴えようと思ったりもしない。

私にとってこの傷は、噛まれただけの、何でもないものだ。

「・・・ひなた」

体勢を整える私に、彼は真剣な表情を向けながら一層低い声で名前を呼んで。

「頼むから、怒ってくれ・・・」
「・・・・・・」

私の肩を掴んだかと思うと、視線を落としながら、苦しそうな声色でそう言った。

「・・・どうして?」

でも私は怒る理由が無い、と彼の顔を上げさせながら問えば、眉間のシワを深くさせた表情が垣間見えた。

やたらと私の体の傷を気にする彼だから。
傷をつけてしまったことが、許せないのだろうか。

そう考えていると。

「・・・逃げようとするひなただけは、記憶にあるんだ」
「!」

少しの間を空けた後、私とは未だ視線を合わせないまま、言いづらそうな雰囲気で答えた。

「それを無理に拘束して、怖がらせた 」

・・・覚えていない訳では無く、断片的には覚えていたんだ。

というよりは、その時に意識はあったけれど制御ができなかったのだろうか。

「・・・すまない。謝って許されることではないんだが」
「許すも許さないも、私は怒ってないけど・・・」

それよりも、彼が必要以上に罪悪感を覚えていることに、こちらも申し訳無さを覚える。

あの時・・・逃げなければ良かったのだろうか、と。





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